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[コメント] エレファント(2003/米)

前知識なしに観たお陰で、終了後しばらくぼーっとしてしまいました。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 コロンバイン高校の銃乱射事件。これはアメリカで初めて起こった、高校生による重大事件として記憶される。丁度その頃はネットが普及し始めていた時代。私もテレビではなくむしろネットで書かれたものによってこの事件のことを知ることになった。当時かなりの人がショックを受けたらしく、数多くのサイトでこの事件について書かれており、私もいくつか書いた記憶がある(今は閉鎖されたサイトで。念のため)。その後ムーア監督によるドキュメンタリー『ボウリング・フォー・コロンバイン』もあり、そう言う意味では割と自分自身記憶している。

 ところがこの作品、実はその事前情報全くなしで観てしまった(しかもビデオで)。それで最初の内はなんだか退屈な作品だなあ。と言う程度でぼんやり観ていたのだが、その分後半30分の衝撃は凄いものだった。「ああ、これだったのか!」と、驚かされることに。

 特に本作のすごさは、前半部分は退屈な、いかにも普通の学園生活としか見えない、極めてリアリティが高い作品で、それをザッピングして観ているだけ。という感じだったのだが、実は、その「なんと言うことの無さ」が後半の恐ろしさを倍加させる。日常の延長線上にこんな恐ろしい事件が!なんか普通に生活してる学校が、ほんのちょっとのずれで阿鼻叫喚。いや、ずれているとさえ見えない。本当に日常の延長で殺人が起こってしまった感じがするのだ。ラストで鼻歌交じりに銃を突きつけるシーンなんかは本気で背筋が寒くなる。

 しかもこの作品、オチがない。二人の殺人者は確かにそれまで虐められていたのは確かだが、そんな二人が殺人に走る動機も、そして彼らが何を考えていたのかも、一切出てこない。本当に、普通の人間がそのまま殺人鬼になってしまう。

 こういう作品は普通“何故起こったか”を主眼にしているし、本作も一見そのように見えるのだが、オチまで観ると分かる。答えは“理由はない”になってるのだ。最後で唖然として、しばらくボーッとしてから、ようやく面白さがじわじわと沸いてくると言った不思議な作品。

 一応本作はアメリカ製の作品で、カンヌでは大絶賛を受けたが、内容が内容だけにアメリカでは限定公開。無理はないな。

(評価:★4)

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