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[コメント] 21グラム(2003/米)

予告編にガツンと打ちのめされた。本編にガツンと肩透かし食らった。 2004年6月19日劇場鑑賞(少し厳しめに★3)
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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正直、少し悩んだ。物語としてはそこまで上手いとは思えない。3本の物語をゴチャゴチャに混ぜながら、切り刻み、複雑に同時に絡み合わせる事によって観客の(映画の一秒先に対する)好奇心を煽り、且つあれだけゴチャゴチャにしながらも見終わってきちんと物語が把握できている、と言うその圧倒的な構成力は本当に凄いと思う。

裏を返せば、単純に一つの心臓と事故、喪失を巡る悲劇。確かに、ストレートに描いてしまえば、あまり面白味の無い作品に成りかねない気もした。実際、所々少々強引に思える箇所もあったと思うし。プロット自体は面白いのだけど、何か語るのに無駄に時間をかけ過ぎている気もした。そういう訳で、テンポが緩く感じ、上映時間が実際の時間より長く感じて、少々冗長に思えた。

特に、クライマックスはもっと畳み掛けるようにテンポ良く描いた方が面白かったのではないだろうか、と思うのだけどなぁ・・・

結局の所、登場人物に最後の最後まで感情移入し切れなかった俺自身の問題もあるのだろうけど、正直、少々心理描写が足りなかった、と言うか何と言うか・・・

ショーン・ペンがただひたすらナオミ・ワッツに近づくのも、理由が何となく分らないでも無いが、ストーカーしてる変なオッサンにしか見えなくも無いし、ナオミ・ワッツにしても、何か心理描写が中途半端な感じが否めない。その点で、ベネチオ・デル・トロ演じたジャックと言う人物は脚本家、監督に好かれているのだなぁ、と思えた。

正直、ショーンやナオミ・ワッツの様な人物像は(勿論、デル・トロ演じるジャックもそうだけど)ありがちにすら思える。しかし、このジャックだけはあの二人とは違う、何かを感じた。監督が本当に描きたい作品の真意に近そうな何かを。

この物語はとことん悲惨で、冷めた視線で人生を切り捨てている感じがする。しかし、「それでも人生は続く」と言い張る。オマケに最後の最後にショーン・ペンにナレーションで「21グラムの重み」について語らせる。

やろうとしている事、描こうとしている事はメチャクチャ面白いと思う。だけど、熱が無い。張り詰める緊張感、それも生命の力強さを感じる緊張感、と言うのか、そういう野性的な物が感じられなかった。

容姿の問題もあるのかもしれないけど、ショーン・ペンナオミ・ワッツからは都会的な、と言うか一般的な喪失、失意しか感じられなかった。しかし、デル・トロの喪失感はひしひしと伝わってきて、彼が必死に心の奥底で叫び声をあげながら生きている様子が痛々しくもカッコ良かった。

まるで『アモーレス・ペロス』の一話目のガエル・ガルシア・ベルナルの様な。

音楽は派手に演出せず、静かに流れる。必要以上には流れない。そのスタイルには関心した。ドラマを作るには、下手な音楽よりも役者の熱演と脚本の噛み合い、そして監督の演出力さえあればどうとでもなる、と実証している。

なんか感想がまとまらないなぁ・・・

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ゼロゼロUFO[*] 甘崎庵[*]

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