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[コメント] スイミング・プール(2003/仏=英)

俺のスイミング・プールじゃない。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 彼女は作家としてある種の脱皮をとげたわけだ。クライム・アクション物の売れっ子だった彼女(サラ=シャーロット・ランプリング)が、それとはちょっと毛色の変わった作品を書き上げた。クライム・アクション物の読者は特にそういう変化に敏感だから、今まで使ってきた出版社が出してくれるわけない。そう考えて(かどうか知らんが)彼女は、別の出版社に持ち込んだと。20年間一つの出版社から同じシリーズを出し続けてきたことによる欲求不満が物語の発端だったわけだから、要するに彼女は泳ぐプールを替えたわけですな。

 この映画が同時にフランソワ・オゾンにとっても”泳ぐプールを替える話”になっていたとしたら、俄然興味が湧いてくるんだが。私にとっては(と言いつつ、ここはほとんどの人が賛同してくれるんじゃないかと思うんだけど)、これまで彼女がどんなプールでどんな泳ぎ方をしてきたのか、ほとんど手掛かりがつかめないという事もあり、誠にどうでもいい、実にしょうもない話、でしかなかった。

 ついでに言うと(全部ついでだ)、繊細な感情表現が豊かであったことは私も認めるが、これは所詮フェイクだから駄目なんだよ。それらの表現が実を結ぶべき「物語」がそもそもつまんない、ってのもあるけれど、それ以前にこれが観客を欺くための”虚構内虚構”と化しちゃってるところが駄目。そういうものを描くためにこそ、物語というストラクチャーはあるわけだから。最後に残ったのは、出版者・ジョンの娘(ジュリア)の実際の姿が、そばかすだらけの顔で歯を矯正中のポッチャリ系少女であることと、サラの小説の中のキャラクター(ジュリー)がいかにも性的に奔放なフランス娘であったこと、その落差だけですね。

 まあ、ほんとはどんなプールでも泳ぎたいんだけど。なんかそういうのは最近の流行りではないらしい。

75/100(05/01/23見)

(評価:★3)

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