[コメント] 吹けよ春風(1953/日)
高度成長前夜の楽天的な気分が詰まったオムニバス。引揚者の件だけは真剣であり、ここでクロサワは山村聰とともに、戦中派として中国へ謝罪したのだと受け取った。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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「刑務所に入っていた」山村聰とは、罪名が明かされないのだから、戦争協力者としての彼自身の罪状だったと受け取るべきなんだろう。そして子供たちは父親を中国語で迎える。山村は他にも『自由学校』などで戦中派の罪を背負ったのだったが、クロサワの告白はおそらく本作だけだろう。これを谷口と三船敏郎という戦後派に託したように見える。
車窓から反対の窓まで屋根を渡るパフォーマンスを酔っ払いのようにシツコく繰り返す泥酔の小林桂樹の件は面白く(引きのキャメラで撮ってほしかったが、まあ無理だろう)、小川虎之助の親爺は愉しく、青山京子でオムニバスを締める呼吸はさすが。三船の一家を紹介せず、ただミラーからぶら下げた人形で示しているのも品がいい。無精鬚の三船もいい造形。拳銃所持の三國連太郎の件だけは私はつまらなかった。
全体に朝鮮戦争特需の好景気に浮かれた街の気分が横溢している。車窓からの風景がよく撮れていて単純に面白く、風俗も面白い。左ハンドルも時代なのだろう。タクシーが客乗せたまま給油するとは驚きだし、「アパートっちゅうケッタイな処」は立派で驚かされる。三船は三國を乗車拒否しようとするが、神風タクシーなる粗暴なタクシーが横行したのは50年代後半とのこと。
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