[コメント] 悪い男(2001/韓国)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
ただ結局どういう映画なのかと言うと、イマイチ説明し辛い。いくつかの言いたいことや描きたいことを、いびつに串刺しにして力技でひとつに纏め上げた感じがしてならない。ということで、その印象のままに、思ったことをいくつかに分けてみようかと思う
●主人公のキャラクターについて
「悪い男」とレッテルを貼るには、あまりに複雑なこの男。正直なトコロ、本当にキャラが一貫しているのかどうかを、部分的に疑ってかかってしまう。しかしその中でも最も特徴的なのは、「声」を失っているという設定。これは直接的なコミュニケーションが機能していない状態ということで、この映画の一つの大きなテーマを描き出すための伏線になっている気がする。そしてそれ故の婉曲的なコミュニケーションは、あらゆる手を使って好きな女を貶めながらも、胎児のように丸まって横に身を寄せるしか術のない男、という描き方や、マジックミラー越しの視線などに繋がっていく。
●肉体を排した壮絶な絡み
果たして一緒になった後も、彼らが体を合わせることはあったのだろうかと疑ってしまうほど、あえて直接的な肉体関係を排している。しかも「性」が氾濫している背景に身を置きながら。そこで浮き彫りになるのは、彼らの精神的な「絡み」。彼らはセックス以外の何か、例えば視線と視線みたいなもので、壮絶な絡みを演じ、その愛(みたいなもの)を成就させてしまう。そしてその二人の傍らにあるのは、様々な湿った思い入れや虚飾などを排して形骸化した、ただの生業としての「セックス」。もはや甘い幻想も罪悪もなく、二人の間には何の関わりもないことだとしても、それでも捨て去ることができずに引き摺って生きていかなければならない部分。実は肉体と精神の分化、ここに一つの大きな目的があるような気がしてならない。
●赤裸々な
そもそも、エゴン・シーレの絵画自体が、セックスにまつわる甘やかな幻想や虚飾を剥ぎ取り、赤裸々なまでに生々しい性を描き出したものではなかっただろうか。この映画において、それが果たしてそこまで成功しているか否かはともかく、どこか共通する感覚があるような気がする。
主に感じたことは以上。どこかまだ荒削りな感じがしないでもないけど、様々な試み自体が面白い。そして一つのピークとも言える、激情にかられてついに言葉を発するシーン。そこに滲み出る哀しさや滑稽さが、この映画の真の正体ではないだろうか。
・・・しかしそれにしても、韓国映画においてはライトSFとゲロがどうしてこうももてはやされるのだろうか。最大の謎といえば謎。[3.5点]
(2005/05/14)
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