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[コメント] 悪い男(2001/韓国)

キム・ギドクの描く「愛」とやらは、なんだかいつも一方的な気がする
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







正直、「何が正解なんだか分からねえよ」というのが率直な感想。

なんだか、キム・ギドク作品はいつも同じような感想を抱くんです。 もっともたいして観ているわけでもないので、「いつも」というのは語弊があるのですが。

つまらんわけじゃないんです。 むしろ映像的には面白くて、つい見入ってしまう。 でも話が好きになれない。 話もつまらんわけでもないし、くだらないわけでもない。ましてや分からないわけでもない。 意図してることは理解できるのです。

おそらく、気持ちが乗らないんですわ。

たぶんファンタジーなんですよ。ダークファンタジー。 ただそれが、マッチポンプって言うんですか?勝手に火を付けて勝手に消してる感じがしちゃう。 ファンタジーたる設定が我々の日常感覚から飛躍し過ぎてて、気持ちがついていかない。 要するに対岸の火事。

だから、少しだけ私の理解しやすいように解釈してみよう。

おそらくこの話、男がかつて愛した女と「瓜二つの女」を見つけた所から話が始まっているのだろう。 それは破り捨てられた写真のクダリからも容易に想像できるが、それ以前に、ただ「いい女だったから」だけで強引なキスをするようじゃあまりにも低俗すぎる。男は彼女を見た瞬間、運命を感じたに違いない。

そして、「かつて愛した女」は既に死んでいるのだろう。 おそらく、その死因に男は深く関わっていて、彼が声を失う原因も彼女の死因と関係があるに違いない。 多分に文学的な解釈ではあるが、文学であったなら、この両者には絶対に因果関係がなければならない。 その因果関係があってこそ、彼が唯一発する言葉に表面以上の意味が生じるのだ。

あの海辺は、男にとって想い出の場所であると同時に、男の心象風景なのだろう。 赤いドレスの女が入水するのは、男の気持ちが、忘れられない「過去の女」から「今の女」にシフトしたとも受け取れる。

男の過去に何があったかは分からない。 男がヤクザだから女を死なせたのか、女が死んだからヤクザに身を落としたのか。 今の女への接し方から推測するに、男は女に憎悪を抱いているとも考えられる。 であれば、あの海での赤いドレスの女の入水は、男の感情が「憎悪」から「懺悔」へとシフトしたとも考えられないだろうか。

歪んだ愛の形の裏にある憎悪と懺悔の物語。 そう考えてみて、少しこの話に接しやすくなった気がする。

ま、何が正解なんだか分からねえけどな。

(評価:★3)

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