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[コメント] アフガン零年(2003/アフガニスタン=日=アイルランド)

字義通りのネオリアリスモの傑作。撮られるべき映画が撮られ、記録されるべきことが記録されている。胸が悪くなる暗黒世界。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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DVDの監督インタヴューによれば、元は「虹」というタイトルで、希望のある収束だったとのこと。途中、お祖母さんの「虹を渡れば悩みはなくなる」という寝物語が二度語られるのが伏線だったのだろう(労働が辛い男の子が、女の子にしてくださいと祈る)。編集段階で監督は正反対の収束を選んだ、撮られた映像がそうさせたと語っている。少女の名前及びタイトルがビンラディンと同じファースト・ネームとは何という皮肉だろう。

タリバンの存在は生々しい。子供たちをどこかに連れ去る訳ではなく、夜は家に帰している。子供たちに勉強させ、イスラム原理主義を教え、軍事訓練を施す。民衆は隠れて批難する歌を歌うなどするが、雇人の老人は脅されて少女を簡単に諦める。

製作はモフセン・マフマルバフがタッチしている。彼の映画よりも判りやすい。女性の紫の衣や、タリバンに集められた子供たちの白いターバンの装飾は、後期のクロサワの時代劇を想起させる。イラン映画との往還の成果なんだろう。

最後の老人は、普通このキャラは善人であるはずだが、逆手に取って大悪人と判明する。裁判をも逆転させる資金提供者。貞操帯選ばせているのだ。最悪の爺さんだった。こんな奴はタリバンが滅んでも生き延びているのだろう。胸が悪くなる暗黒世界である。

(評価:★5)

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