[コメント] モンパルナスの夜(1933/仏)
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それもその筈、彼は蒙古由来のひとだそうで、ソ連映画の『アジアの嵐』('29/未見)でも凄い様です。
一方のメグレ警部(当時)を演じたアリ=ボールも、寡黙で温厚な風貌の、厚ぼったい細目から覗く眼光がカッコイイ。
1930年に発表されたジョルジュ=シムノンの「男の首」が原作。100編以上ある有名なメグレ警視シリーズの一編。未読だが、原作では第一容疑者ウルタンが死刑判決を受けた後、メグレが馘を賭けて脱獄させるという物凄い話らしいのだが、それを実現出来なったのは予算の故か。デュヴィヴィエ監督でそのシーンも魅せて欲しかった(本筋ではないから矢張り無理か)。
流石に当時でも現場検証で容疑の固まってない関係者を鉢合わせにする程の不用意は無いだろうが、刑事ドラマ以前の当時(日本でも戦前の'35年公開)で、このような殺人捜査の現場を描いたドラマは、観客をワクワクドキドキさせたに違いない。
'30年代前半の作とは思えないスリリングな人物描写で、流石デュヴィヴィエと思わせる。しかし途中、現代からすると何ともな表現も散見し、微笑ましい。(ラデック(インキジノフ)がゴツい顔の奥さんを無理やり部屋に押込む時の室内の喧騒は、アリャ何なのだろう…?)
作品中、ラデックが言う「テイラー事件、知ってるな? あれと同じ事になる」というのは、1921年に聖林で無声映画監督のウィリアムズ=デズモンド=テイラーが殺された事件を指す。
ラストでラデックがタメの無い潔い巻込まれ方で車の下敷きなった時、救急車を呼ぶより先に巴里市民の一人が薬局のシャッターを連打する。第二次大戦前ではあるが、革命・コミューン等を経ている巴里は逞しいなぁ、と感じた。
医学生崩れが知能犯になるというのは黒澤の『天国と地獄』('63)を想起させるが、影響を与えているのだろうか。こちらは余り医学生である必然を感じなかったが。
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