[コメント] ヴァンダの部屋(2000/ポルトガル=独=スイス=伊)
フェルメールの光と影で描かれた『忘れられた人々』。ハードな現実に投げかけられる柔らかな光という対位法からは、むしろミレーの農民画を想起するべきか。売り物のキャベツを傍らに道端に腰を下ろすヴァンダの肖像が心に焼きつく。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
解体される家の壁面に記される×印はナチの手口だ。心に残る科白の数々。ヨーグルトがせめて苺味であったらとの恨み節。鉄線で近親に怪我をさせた回想に続く嘆き「いつもヘマばかり」。棲家を解体されるパンゴの独白「船を乗り換えよう」。このとき扉から漏れる光がまた美しい。ヴァンダの母親が早朝に立つ炊事場の窓を彩る空の蒼さには、殆ど魂を吸い取られそうになる。屋外の空気感も素晴らしい。路地に立ち上がる炎から、タルコフスキー『鏡』との類縁に思い至らされる。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。