[コメント] 女人哀愁(1937/日)
入江は最近見合いをした話をする。見合いの相手は北沢彪。北沢には、会社に金を借りに来る妹・沢蘭子がいる。
入江の家。入江の弟は『はたらく一家』で次男をやった伊藤薫。従妹・堤真佐子(佐伯秀男の妹)が来ている。入江が帰ってきて「ブルームーン」でダンスをする。こゝで入江はいきなり自己否定して泣きだすのだが、この演出には驚く。この後、入江の北沢の家への嫁入りと、嫁ぎ先での苦悩が描かれる。
勤め先が銀座だったり、中盤以降かなりの上流家庭を舞台とする、といった題材からの要請(お洒落なムード醸成の必要)もあって、演出的には華麗なテクニックが披露される。例えば結婚式の撮影風景が、ストップして、フレームも付いたスチル写真に転換されるといった処理が見られる。あるいは、素早いパンニングで、複数人の会話を見せるシーンが目に付く。バーのシーンや、義妹と友人の女学生達が家で遊ぶ場面など。また、屋内のトラック前進移動なんかも使うし、こゝぞというときの、人物の振り返り際のアクション繋ぎにも、あっと驚かされる。お洒落な雰囲気と言う意味では、インストゥルメンタルのジャズの劇伴も、頻繁に現れる。成瀬も小津に負けず劣らずモダンなのだ。
ラストはタイトルから想像していたのと違い、力強い女性の自立讃歌で結ばれる。こんなエンディングとは思っていなかったので、拍子抜けもしたが、晴れ晴れとした気持ち良さが勝っている。
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