[コメント] 君が若者なら(1970/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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松竹配給の新星映画だが、深作は実録系の技を投入しており、『ラ・ジュテ』みたいな写真の連鎖も手持ちキャメラも派手。悲痛な表情でストップモーションも派手だ。
ダンプ買って月収ふたりで50万円、という掴みは爽快だ。中卒の金の卵でも稼げるんだという痛快さ。いまでもダンプ買ったら儲かるんだろうか、と観客に考えさせる作品でありとても具体的でいい。土建業が深作らしくていい。これを収束に持ってこれなかったものなのか。1970年に爽快な映画などあり得ないと云っているような具合だ。
組合員のスト破りに加担した石立鉄男のダンプなど一度破壊された方がいいのだ、旧友の河原崎長一郎を庇って逮捕された前田吟が正しいのだ、という気づきが本作の収束なのだろう。
件のスト破りは今でいう正規と非正規の差別そのもので、正規がストしているときに非正規に働かせる。組合運動とは昔はそういう限界があって次第に官僚化していったのだろう。非正規を単一組合に入れようという動きはほんの最近のものだ。当時は本作のような差別が横行したのだろう。
峰岸徹が殺されるのも高額報酬のスト破りに参加したら警察官までスト破りしていてストしているお姉ちゃんを助けたら殴り殺された、というもの。最悪の最期である。
最期の河原崎の回想がいい。彼等は漁村出身なのだが、海が嫌いで、親父に海に行けと云われるたびに嘘ついて誤魔化してきた。嘘つくと海に行かなくて済んだ、いいことがあったんだ。そうやって嘘ばっかりついていたから何が本当なのか判らなくなった。嘘つく癖がついちゃった。ああ、こういうことってあるなあと思う。この台詞に1点加点。ラストは『真夜中のカーボーイ』に似すぎたかも知れない。
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