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[コメント] 全線(1929/露)

農村大規模化、機械化の宣伝映画。共産党員が説明して農民がソッポを向く件がある処から見ても、この方針は別に強制ではなく農村単位の合意が必要で、本作はこの宣伝に活用されたのだろう。物語は不自由なものになっている。「大いなる鉄!」「大いなる機械!」。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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全体にプロパガンダめいているから、リアリズム描写もどこまで本当なのか疑わしく見える。よくあるようにここでも問題編と解決編があり、問題編の方が面白い。あばら家で死にかけている一家、床は抜けて家の中も泥濘。兄弟が独立すると家も土地も分割せねばならないと、家には鋸がひかれ土地は境界だらけという揶揄(終盤に境界はトラクターで粉砕されるのは上手い)。これ見ると本邦のイエ制度はこれを阿呆らしくも見事に解決したのだと思わされる。最も求心力があるのは主人公が富農に馬借りに行って断られてションボリしているショット。

キリスト教の神頼みもさんざ阿呆にされている。このペテン師のような雨乞いで稼ぐ神父がいたのだろう。ここはいい美術があり、山羊のアップ連発と黒い蝋燭がすごい。エイゼンシュタインの方法論全開。

解決編では、あまり脈絡なく豚の丸焼きの機械化の件があり、これと豚のキャラクターとのカットバックが異常に印象に残る。牛乳搾乳器と農民たちの顔アップ連鎖もらしい。あの近代化ビルはこれからの予定という処だろう。役人と喧嘩している件も発見がある。役人はまだ共産党員ではないということなんだろう。全体に、共産党は強権を握っていないという処が興味深い。牛が花婿という結婚式も、スカート破り続けるトラクターというショットも何なのかよく判らなかった。機会があればまた調べてみよう。

(評価:★3)

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