ストーリーと呼べる代物ではない筋書きという程度の設定に、アイデアもアクションも平均的でこれといったハイライトは見いだせない作品である。それでも当時のヒットメーカーとしての期待には充分に応えているであろう仕上がりは順風である。ただし、本作の粗さはエドナの男装やストライキ団の来襲など、やはり強引なシーン展開による映画の語り口にあるため、作品の質としては低廉な感が否めない出来栄えであるといいたい。本作のようなオフステージものの作品はチャップリンフィルモグラフィにおいてもいくつか前例があるため、同素材ネタという観点から厳しく見れば、創造性の弱さが際立ち少々残念である。ただし、エドナの男装というキャラクターイメージの新たなプレゼンテーションは新鮮な印象で受け取ることができた。もう少し男装をしたエドナが活発に動き回ってくれれば、この作品ももっと面白くなったに違いない。なかなか見られないエドナの変身ものなのでその点ではちょっともったいない。『チャップリンのカルメン』同様、エドナの映画となれば幾分エクステンションした本作ではあるが、階段落ち、パイ投げが余程楽しかったか、惜しい作品である。