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[コメント] 田園詩(1975/グルジア)

冒頭はお役所だろうか。何かの申請か。この冒頭からパンニングしながらのズームインを使う。本作は、全体にズームの寄り引きの多い映画。イオセリアーニも、時代的な流行から免れていないのだ。
ゑぎ

 さて、場面はすぐに邦題にもある田園地帯に移り、女性3人と男性2人の楽団メンバーが村にやって来るシーン。演奏はカルテット(鍵盤楽器の男性1人、弦楽が女性2人と男性1人)なので、女性1人はマネージャーのような役割だろうか。バスから降りて歩く。村の若者がジロジロ見て、いい女だぞ、みたいなことを囁いている。この若者たちも、もう少し絡むのかと予想したが、ほとんど役割はない。

 村では、牛、豚、鶏、犬、はては馬まで放し飼いのようだ。これらの動物が、自由に画面を横切って行ったりする。また、カルテットが練習を始めると、子供たちが沢山集まる。そして、宿泊先の娘はエドゥキ。中学生ぐらいだろうか。父親のトラックや祖父の馬車のために門を開けるのは彼女の仕事だ。働き者のいい娘。彼女には弟と妹もいる。本作は基本的に楽団メンバーの村での行動を綴った映画だが、このエドゥキという娘が主人公という見方もできるだろう。彼女は、あからさまではないが、チェロ奏者の男性に好意を寄せているようにも見える。

 一方、当時のソ連らしい集団農場の文化もいくつか点描されている。エドゥキの父親はトラックにたくさんの農民を乗せて運ぶ運転手のようだ。飛行機での農薬散布の風景。大きな畑の側を通る列車の中の人々と、農民たちが見つめ合う場面。集団農場の事務所なのだろう、エドゥキの父親が、上長から叱られるシーン。あるいは、組織の有力者を歓迎するための宴会。宴会後の飲み過ぎの男たち。

 そんな中で、エドゥキの隣人が、自分の家に窓を向けて増築しているとエドゥキの親たちを怒る場面が面白かった。「全員死に絶えろ!」と云うのだ。あと、エドゥキがミニスカートを履いているシーンがあるが、特にラスト近く、楽団が帰る日は、膝上15センチぐらいの短いスカートを履いていて、これには多分、意味があるだろう。

 タイトルから、もっとストーリー性の希薄な映画かと思っていた。エドゥキ、あるいは、カルテットのチェロ奏者の男性を中心としたストーリーが、思いの外あるように感じる。ということもあり、邦題の「詩」という言葉が、あまりピンとこない。

(評価:★3)

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