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[コメント] わが故郷の歌(2002/イラン)

クルド人の悲惨な現実を描くためゴバディが用いた手段は笑いと音楽。とにかくその手際の見事さに感心するのだが、そうしていられたのも中盤まで。後半イラク側へ移ってからの描写のその恐ろしさは涙も凍るほどだ。
ナム太郎

前半の親子による快調なコメディ演出や、クルド音楽の独特な音色に引き込まれそうになるとき、非情なまでにそれを寸断する戦闘機の音や爆撃音。また、それらの音が音楽のように日常に降り注ぐ後半は、それら音でさえ難民たちの悲痛な叫びがかき消してしまう。

こんなものを見せられると、もう涙すら出ないようになってしまう。しかし、最後ゴバディは、次代を担うカップルや子どもたちにかすかな夢と希望を託して物語を終える。その切なる思いには胸が熱くなる。

それにしてもゴバディの演出は素晴らしい。構図や色彩が単調にならないようにとの繊細すぎるほどの配慮(前作に続く原色の効果的な配色!)やグネグネ道、サイドカー付きオートバイによる旅などという流れも映画好きの心をくすぐるが、上記のような音を基調とした演出力の確かさにはとにかく圧倒された。

(評価:★5)

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