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[コメント] 人間魚雷出撃す(1956/日)

裕次郎たちは何か上の空で、いまから死ぬのに平気そうで、まるで次の映画の役作りに気を取られているように見える。そんな造形なのだろうか。映画もそれに見合って低体温症だ。考証は充実しているらしく再現美術は見処。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







クレジットに「資料」として「伊号58帰投せり」橋本以行、「鉄の棺」斉藤寛、「人間魚雷生還す」横田実とある。冒頭は戦後、ワシントン軍事法廷及び報道人のインタヴューで、艦長の森雅之が回天を「できる限り使用したくなかった」と理由を語り始めたところで、昭和20年7月初旬に戻り回想が始まる。

90分映画らしく、いきなり瀬戸内海で回天の練習ではじまる。多くの特攻モノと違い、特攻兵たちが決意するまでの物語がないため観客を戸惑わせるところがある。それに、練習ってしかしどうするのか。葉山良二や裕次郎はホンネは「絶対に死んで来い」だ、と上官の内藤武敏を批判している。一旦休暇。出撃。七生報国の鉢巻。回天は潜水艦の上に四基。

特攻兵横にしていつもの将棋指す西村晃安部徹。その他浜村純とか高品格とか日活の面々が並ぶ。「快心の体当たりを祈る」と森の晩餐の挨拶。轟沈でバンザイする安部がいい。潜水艦から号令を受けて発射。この美術が専門誌によるとリアルらしい。石原1号艇故障、杉幸彦2号艇発進、葉山3号艇、どっちも命中、長門の4号艇は予備。1号艇は使えず「再起を図れ」の命令。

「こういうことは戦いの邪道だと思うんです」と石原は云う。別に葉山の死に涙する演出はない。長門は出撃空振りを怒る。そして計器故障。石原とふたりで森に訴えるが却下「無駄死にはさせたくないんだ」。守勢になり、潜水艦が前方に傾いたと後方へ米俵を移動させている。酸素不足、水漏れ浸水、森は「本懐を遂げさせよう」と故障艇出撃、石原も長門も屈託なく、余りにも積極的。どちらも命中。

淡々と死んじゃったなという感想以外、余り出てくる余地のない映画だった。石原は相対的に寡黙で珍しい気がする。石原の妹の芦川いづみのつくった人形の顔がシュールでいい。彼女も左幸子も関係者というだけの登場に終わる。

(評価:★3)

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