[コメント] 弘高青春物語(1992/日)
ファーストカットはマント姿の学生の後ろ姿ショット。こゝに出て来る学生たちは皆、旧制弘前高校の学生ということだろう。唐突に仰角ショットで、赤い着物の女性の後ろ姿が繋がれ学生と押し相撲をする。
それはカットを換えると、牛が曳く台車の上だった、というようなアイキャッチする演出。古い建物と商家の看板。門付けの女性の横移動。三味線を教わる学生。お堂みたいな建物での幽霊の出現。門付けの女性は幽霊の出てきた穴に引っ張り込まれる。
あるいは、温泉場のようなところで、若い女性の脚をティルトアップで見せるショット。それは水商売っぽい粋筋の着物を着た女性だ。この女性と学生との会話及びキスシーンのツーショットを180度反転させて繋ぐ。
また、桜のある風景と城。学生たちと町の若者の喧嘩のシーンで、何発もビンタをお見舞いする演出。町の若者は、お前たちのせいで、女性が見向きもしない、という理由で怒っている。次に、女子高生たちの反応が脈略も無く連打されるのもいかにもという感じだ。
そして、玉川伊佐男と野川由美子という日活時代の常連俳優が姿を見せるのもとても感慨深い。玉川の闊達な口上。野川は、朝鮮人のリーさんを助けると共に、浜辺での別れという見せ場が与えられている。
こういった様子で、主人公といったもののない、様々な挿話がランダムに並べられているような作品で、製作費も少ない状況だったのだとは思うが、それでも、清順らしさは随所に見ることができる楽しい小品だ。美術は『陽炎座』や『夢二』でも組んだ池谷仙克なのだ。制作は同窓会と出たが、私は、ちゃんと商品になっていると思う。ただし、これ以上ハメを外せなかったのだろうとも思う。
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