[コメント] 不可能世界の旅(1904/仏)
フェティッシュなタブロー・ヴィヴァンは時を経てもなお色褪せないGOODアーリームービー
初期衝動であるがゆえの感動を与えてくれる、技術を超えた驚異的な到達点に賛辞を贈りたい作品である。これが後に、カレル・ゼマンにヴァイト・ヘルマーにいかに現代的な施しをもって焼きなおされようと、オリジナルであることの輝きは今もってなお失われない映画史における金字塔である。メリエス映画の醍醐味はやはり、その奇想天外なイマジネーションを実現させるトリック映像も然ることながら、フェティッシュな劇空間の創造が類まれにして天才を決定づける境地にあることだろう。そして惜しむらくは、この100年以上も前に遡るひとつの映画が、現在に至って息づくことを可能にする肝は、当時の技術至上主義的な見地を時代の要請であるしつらえとして世界観に据えて、19世紀的スチームパンクともいえるフューチャー志向が、現代的な解釈によってレトロ味を帯びた郷愁となるメタモルフォーゼ的趣を孕んだ貴種としての変貌にある。間違いなくメリエスは映画巨人ではあったが、しかし、それは計算によるものでも芸術神の降臨でもなかった。晩年はその天然純度の価値が時代の要請によって駆逐されてしまうという悲劇の末期であった。なおしかし、この作品の輝きは失われない。名作は永遠に不滅なのである。
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