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[コメント] スパイダーマン2(2004/米)

「スパイダーマン」なる手首から粘着質の糸を噴き出す男の話ですが、「ホントにこの世にいてくれたら」と年甲斐もなく思っちゃった。世界にはヒーローが必要だ。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 これは劇画『ゴルゴ13』が描くところの”ギラン・バレー症候群”と同じですね。厳密に言えばギラン・バレー症候群はウィルス性の多発神経炎ですから、ゴルゴの症状にはあてはまらないし、ピーター・パーカー(トビー・マグワイア)の症状にもあたらない。ただ、要はゴルゴの例で言えば銃を持つ右手が麻痺して動かなくなる、ピーターの場合は手首から糸が出なくなる、つまり自分の持つ特殊能力が肉体的な症状により発揮できなくなる状態ですね。両者とも原因は心理的ストレスによるものです。

 「スパイダーマン」つまりクモと人の合いの子的存在ですが、彼のクモたる資質が、彼を人間界においてヒーロー足らしめています。普通の人間のままであれば、彼はヒーローを演ずる必要はなかった。だから彼に残る人間的部分は、自分がヒーローであることを受け入れきれないでいます。そりゃそうです、クモ化する前の彼は、単に物理学が好きなだけの内気な青年だったんですから。ヒーローであり続けること、これがどれほどの心理的負担になるかは凡人の想像外ですが、どんな超人的人間であってもこれを克服するのは困難だ、それだけは言えると思います。もちろんゴルゴにとっての人を殺すこともそうですね。

 ただし、再び厳密な言い方をしますと、紙の上のキャラクターであるゴルゴ(スパイダーマンももともとはそうですね)が心理的ストレスを感じるはずはありません。したがって、これは作者が感じたストレスの、作品上への無意識の投影である、と考えられます。ヒーローを(ゴルゴの場合は悪のヒーロー、ということですが)描き続けることは、作者の心的状態にも影響を及ぼさずに置かないのです。しかし、まあ、これは私たちには取る必要のない視点でしょう。とりあえず、私たちは”そういうこと”を分かった上で映画を観ています。

 結論だけ言うと、ピーター・パーカーがヒーローであり続ける限り、この心理ストレスは解消しません。経験によって乗り越えられるものではない、ということです。シリーズがいつまで続くのか知りませんが、度々この症状に見舞われても不思議じゃない。ただ、いま目の前にいる敵に対処するとき、あるいは、目標に向かって一心に身をなげうつとき、人は、心理的、肉体的障害を忘れ、大きな力を発揮する。スパイダーマンが誕生した理由はこれですね。すなわち、世の中がスパイダーマンを必要とした。

90/100(04/09/18レビュー追記)

(評価:★5)

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