[コメント] ションヤンの酒家〈みせ〉(2002/中国)
ションヤン(タオ・ホン)は、別に強い女ではない。環境が彼女を強く見せているだけだ。好きでもないタバコを弄んで、火をつけてくれる優しい男を待つくらいに弱い女なのだ。彼女のなかにある疲れた表情は、この変貌しようとする街のため息かもしれない。
彼女は優しい思い出を知らないから、そして彼女をめぐるさまざまな出来事に立ち向かいながら、あの通りの飲み屋を続けてゆく強さを装っているから、いつまでも年齢が判らないほどに若く、美しい。その仮面の下にある容貌を知ろうとしない限り。
日本の高度成長時代の過渡期には、こんな女が沢山いたのだろう。昔気質に自分の町に溶け込み、気に入ったお客にはちょっとサーヴィスを上乗せする飲み屋の女将。こんな女たちは、いずれ街が近代化(=個性の喪失)をされていくに従い、何処へともなく消えてゆくのだろう。今、大都市になろうとするひとつの街の記憶の断面図にある女だ。
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