[コメント] アメリカン・スプレンダー(2003/米)
ドラマ性がないかにみえる平凡な日常のなかから、コンプレックスを逆手にとった悲哀に満ちたおかしみを見つけられる人なら、これほど楽しい映画もないかもしれない。
人は、日常のささいなことで小さく心を傷つけている。その小さな傷はすぐに癒えることがほとんどだ。しかし、その傷がこころの奥底に積もりに積もると、自己の存在にかかわる名状しがたい寂しさに包まれてしまうことがある。そのあたりをうまくとらえたのが『ロスト・イン・トランスレーション』だった。ただ、あの映画の主人公は、有名な映画俳優と有名写真家を夫にもつインテリ美人妻だった。つまり、ちょっとセレブな寂しさなのだ。庶民感覚の日常の悲哀からすると、ややスマートすぎる。
その点、『アメリカン・スプレンダー』は容赦がない。じつに冴えない。『ロスト・イン・トランスレーション』のスタイリッシュなおもむきは微塵もない。だからこそおもしろい。
人生は寂しい。でも時にたのしく、去りがたい未練の場所。そんなふうに感じるひとにはうってつけ。未練は、きれいさっぱり捨ててしまえばいい、というものでもない。
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