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[コメント] ハッピーエンド(1999/韓国)

”主夫”チェ・ミンシクが何か見ていて面白い。個人的にはブラックユーモアとして仕上げて欲しかった。もしくは、徹底的に詩的に。 2004年8月4日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







多分違うと思うけど、この映画ってブラックユーモアなんですかね?虚無感漂う絶望的なラストに被る「Happy End」の文字。すっげーシニカルな幕切れで、思わず噴き出してしまった。

プロットは火曜サスペンスの「犯人の動機」程度にありそうなレベルの話だけど、主婦と妻の立場を逆転させ、女性に依存した男性二人の異常な愛(なのか狂気なのかもはや分別不可能?)を描く点は中々面白いと思う。

チェ・ミンシクの不倫の確証を得て、妻殺害を企て、実行する過程は見ていて一種の異常性を感じ、思わず呆れて、と言うか何と言うか、何故だか自然に笑いが出てしまう(場内笑ってなかったけど)。

対して、執拗なまでに相手を追い掛け回す不倫相手の男も、妻の言葉どおり「狂ってる」訳で、果てしなく幻想的な「ハッピーエンド」、つまり彼女との同棲を夢見ており、その行動もまた一種の異常性を感じる程。

愛が全てを狂わせ、破滅の「ハッピーエンド」へと誘う。

ただ、設定が珍しいからと言って作品そのものが面白くなるとは限らない訳で、チェ・ミンシクが少しずつ凶行に走ろうとする所(=クライマックス)までは少々退屈に感じていた。(ただ、その後の妻殺害シーンの圧倒的な迫力は素晴らしい!)

とにかくチェ・ミンシクが素晴らしい。中年”主夫”を好演。牛乳パックを切り開いていたり、買い物を楽しそうにしたり、近所の主婦と連ドラの話してみたり、古本屋で本を漁ったり、『シュリ』のイメージが強いだけに、そのギャップが笑えて面白い。監督の意図がそこにあるのかどうかは不明だけど。

故か、日頃妻に見下されて「情け無い」って所がなんか笑えてしまって、ついつい・・・(不謹慎?男尊女卑?)

そんな情け無い男が妻の体を何度も何度もナイフで刺すシーンの迫力は壮絶だった・・・(そして、彼の几帳面な性格故に完全犯罪は成立する、と言う何とも皮肉な展開)

結果的に彼は、妻を奪われた怒りを「妻を殺す」と言う結果に結び付けてしまい、最終的に圧倒的な喪失感でラストを迎える。彼の完全犯罪は成功し、自分から妻を奪った男は破滅し、妻は浮気した罪として(?)(彼の手によって)殺された。

しかし、それは本当の意味での妻の喪失を意味する事であり、彼は(俺が思うに)後悔しているぽかった。そして、残った彼には赤ん坊しか居ない。

果たしてそれがハッピーなのかどうか良く分からないけど、映画は「ハッピーエンド」で終わる。日常的な、「普通」が少しずつ破滅に堕ちて行き、そして再び新しい日常的な「普通」が始まる。コレはハッピーエンドなのだろうか?うーむ。

コレ、ブラックユーモアとして描いてくれたら俺は★4を献上したと思うし、そいつをもっと徹底してシニカルに描いてくれれば★5を献上したと思う。もしくは、映像に気を配って詩的に描く、とか。

ただ監督はそんな意図で作った感じじゃなく、コレを見て家族の形をどうのこうの、と語っていた所をみると・・・うーむ。

どっちつかずで消化不良。

(評価:★3)

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