[コメント] 歌え!ジャニス・ジョプリンのように(2003/仏=スペイン)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
相変わらず人間の小さいパブロ(セルジ・ロペス)が、それまではブリジット(マリー・トランティニャン)とワルテル(フランソワ・クリュゼ)を自分が監督であるかのように指揮していたのが、化けていく2人が次第に手にあまり、振り回されていく様が面白い。ドラマ仕立てのストーリーも度々「へ?」と思わせ、安心して観ていられない(笑)奇想天外さ。予定調和的要素を出来るだけ取り去った作品。
本作鑑賞直後、NHKのイタリア語講座で、レオンを演じたクリストファー・ランバートが本作についてインタビューに答えているのを偶然観たのだが、彼によると、この作品、とりわけレオンの人物像には、好きなことをするゆとりがない人間、愛するものをもてない人間、へのメッセージが込められていたとのこと。 異常なまでに熱い回答(しかも英語でもフランス語でもなく“イタリア語”での回答。フランス人・レオン演じたランバートはイタリア系アメリカ人だったのか? NHKは狙ってないだろうけど、これも笑えるオチですね)に笑ってしまった。熱く語る彼のVTRに、本作鑑賞済みと思われる同番組のイタリア語講師も苦笑いしていた。
確かに彼が言うとおり、レオンのジャニス、ジョンへの愛、妻のジャニスの目覚めの描写はそれを物語っているが、キャノン(ジャン・ルイ・トランティニャン)が車を愛したのもその一つだと思う。 本作が、愛車精神を金への執着と同一に分類しているのは、かなり思い切った設定だと思う。 キャノンはそれは自分の一番いやな部分だった、とパブロに述懐したが、愛が執着に、執着が偏執になったと言うことだろう。ただ、それを言うならレオンの偏愛も同じような気もするけど、音楽の強さか・・・。
ところで、ジャニス・ジョプリン本人が歌う映像がワンカット挿入されたが、その迫力たるや観るものを圧倒させるに十分だった。彼女をもっと聴きたい!もっと感じたい!と思ったのは私だけではないだろう。本作で始めてジャニスを知った私は、しばらく彼女のCDに浸ろうと思い、鑑賞する日々。それから(ジャニスに浸った状態で)本作をもう一度鑑賞すれば、奇想天外な本作も一味も二味も変わったものになるだろう。
---
本作で親子共演したマリー・トランティニャンは、2003年、交際中の男の暴力による頭部のダメージが致命傷となり死んでしまう。本作が遺作となった。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。