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[コメント] 馬喰一代(1951/日)

リメイクを先に観たが元祖もとてもいい作品で、比較して人情喜劇に振れている印象。「ダメおやじ」から「じゃりン子チエ」まで幅広い馬鹿親父喜劇のいち典型の趣がある。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







喧嘩に負けて帰ったら激怒して、仕返しするまで家に入れない、と追い出す父親の三船敏郎。こういう父親に恵まれた子供は幸せかも知れない。上品な子役がいい。「おばちゃん(京マチ子)はお父ちゃんが好き」と指摘して観客の予感を補強し、三船を卒倒させたりする。この伊庭輝夫君は田坂の『女中ッ子』で左幸子の相手役だった。

ただの隣人と思いきや祭りの相撲の行事している有島一郎。延々と三船を片思いし続ける京マチ子。大量に買った下駄のネタの使い回しが芳しく、市川春代死去の際の溝にまで転落する紙風船は『人情紙風船』(当時はそんなに有名なフィルムではないはず)。

木谷競馬の賞金で中学進学という将来設計の出鱈目さが喜劇特有。物語としては、相撲で勝って三輪車の夢をもう一度だった訳だ。この愛馬が競馬に勝っちゃうのは、息子の風船の手紙が届いて市川春代が勝たせてくれたんだろう、というニュアンスがあり、本邦の先祖信仰の肯定がある。

OP,題字の墨が格好いい。相撲の件など微妙な編集の賜物で、とてもよく撮れていて愉しく、最後に三船が勝ったらキャメラに向かって全員万歳して土俵に上がって騒ぎ出すようなタッチが可愛い。ここが私的ベストショット。志村の町長選挙演説もバカバカしく大荒れに至り、「稼ぐに追いつく貧乏なし」なる垂れ幕がすごかった。左卜全が若い。三船の弟分は杉狂児とフェイスペイントの星光

馬の病気で馬が白い粉ふいている描写は初めて見た。「馬喰は一代でたくさんだ」とタイトルを喋る終盤はリメイクと同じだが、これを肯定していいものか、馬使いだって存続する世界はなかったのかと複雑な気分にさせられるところはある。これが当時の高度成長の認識だったのだろう。ラストは当時の汽車は客が窓からゴミを捨てているのを記録しているのが見逃せない細部。オーラスの広大な風景はアニメだろうか。

(評価:★4)

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