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[コメント] ヴィレッジ(2004/米)

紛れもなくシャマランの映画。スリラーの奥底にある物を上に押し上げたから、少しシャマランらしくなく見えるかもしれないけど。まぁ結局さほど面白くない「ちょっと良い話」程度だけど。 2004年10月1日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







宣伝ではスリラーとして宣伝されている。まぁ別にTVスポットが大きな声でそんな事言わなくても『サイン』やら『シックスセンス』で「どんでん返し」をやり続けてきたこの監督だし、って訳で、皆その手のスリラーを期待して見に来る。シャマランは一体この作品を(テーマ云々と言う意味ではなく)どういう気持ちで作ったんだろうか。

ある意味、この映画の存在自体が、シャマランの経歴からの大どんでん返しとも取れ、『サイン』はその伏線とも取れる(アホらしい深読みだけどね)。実際、『サイン』ではスリラーとかUFOとかどんでん返しとか、そういう物の根底に家族愛を描いているヒューマンドラマな作品だった。

で、本作品。序盤からスリラー風に見せながら「協定が破られた」だの「赤い色はダメ」だの、意味深な所から始まって観客にスリラーへの期待を抱かせる。まぁ結果的に中盤で(大体安易に想像できた)「森の噂はデマでしたー」などんでん返しを用意し、話をラブストーリーに持っていく(ここで物語をラブストーリーに傾けているのもどんでん返しでもあるのだけど)。

ここで肩透かし食らって「詰まらない」と言う人も居れば、「コレもあり」と取る人も居るだろう。で、俺はその後者。でも、映画はさして面白いと思わなかったから、意味無いけど(ぉぃ

舞台設定を19世紀末に設定し、隔離された町(ヴィレッジ)で生活する人々を描いている、と見せかけながら「実は現代の物語でした」と二段(森の噂はデマ、実はラブストーリー、実は現代、だから三段?)オチする終盤は思わず笑ったんだけど、中々メルヘンチックでファンタジーな話で面白いと思う。この設定は。まぁ実際「赤ずきんちゃん」だしね(あそこで主人公が襲われる必然性は無いと思うんだけどね。だってあの着ぐるみきてた奴はあの子の事好いてたんだから。あっ、平手打ちされたから報復かな?)

世界の腐った現実に嫌気さして、離れた田舎で「愛と平和」を体現するが如く生活している村人たち(まぁ衣服とか食料事情とか、ランプのオイルとか、そーゆーのをどこから輸入してるんか知りませんけど)。彼らは、大事な誰かを守る為に敢えて疎外された地に住み、村の内側にこもり、保守的になる。完全に平等で、平和な町で。子供たちを危険な外界に触れさせない様にする為に、脅し、束縛(勿論彼らは束縛されて居ると思っておらず、むしろ自由だと思っている)し、そして町を守る年長者に育てる。

一見すれば異常な町だが、外界には「自由」があるが故に悲しみが溢れ、愛する人々が引き離される。そんな世界と、保守的に内側に篭っている田舎町と、どっちが異常なのか?

都市で生きる個人主義や競争社会への批判、みたいな物なのかな?

まぁそりゃ確かに『悪魔のいけにえ』の気狂いファミリーは幸せそうだけど(どうでもいい

話そのものは、良く出来た良い話だと思う(パクリ疑惑もあるけど)。でも、結局、終盤までスリラーの要素を捨てきらなかった(揺れる木々の音で不安を煽る演出とかそういうので観客の期待を煽り続けすぎ)せいか、最後までスリラーとラブストーリーのテイストが混在してしまい、作品そのものがどっちつかずの中途半端な位置になってしまった気がする。

だから、見終わった後の感想としては「あぁ『世にも奇妙な物語』みたいだなぁ。1時間半くらいに削ればもっと面白くなったと思うけど・・・」という感じだった。

ラブストーリーに絞るのなら、ラブストーリーとしてもっと緻密に、スリラーとして作るならスリラーとしてもっと緻密に練るべきだと思う。両者を混在させて、且つ観客―しかも今までのシャマランのような大どんでん返しを含むスリラーを期待した観客―を十二分に満足させるには、どっちつかず(←勿論コレは狙いなんだろうけど)の脚本が、「愛」を訴えるには少々力不足に思えた。

勿論コレは、他の観客と同様に「どんでん返しのシャマラン映画」を期待して見に行った俺の感想なので、ハナから「ラブストーリーで、大したどんでん返しは無い」と割り切っていれば、良かったのかもしれないけど・・・・って、そしたら、序盤のスリラー演出が冴えすぎていて混乱しちゃうわね(まぁ柔軟な観客はすっと適応するでしょうが)。

って、考えると、どっちに割り切っても中途半端ジャン、と思うんだけど、シャマランさん。とりあえず、最後の最後(と言うか、コンクリートの塀を乗り越えて外に出る時)まで「森の恐怖」を煽り続けるのは、やっぱりそういうのを期待しちゃうじゃないですか。困りますよ。

ただ、オチ(=実は現在の野生保護地区だった)が分かってしまえば何のこたぁないラブストーリーになっちゃうので、その後は怖くも何とも無いのだけど、そこで一気に緊張感が抜けたのも事実。だってあの娘さん、どうも映画が終わりに近づくにつれて視力が回復してるように思えるんだもの。

それから、安易に音楽で場面を盛り上げるのもどうかと思う。演出面で音楽に頼りすぎている感があって、少々興醒め。

エイドリアン・ブロディはビックリだった。

★2.5(物語自体は好きだし、やろうとしてる事も―例えそれがパクリ臭くても―嫌いじゃないので、おまけで★3)

(評価:★3)

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