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[コメント] MASK DE 41(2001/日)

それほど傑作でもないんですが、僕がこれに高得点を付けないわけにいかない気がしたんです。これはそれくらい「僕らが一度観たかったプロレス映画」なんです。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 野球やサッカー、もっと近い存在で言えばボクシングなんかに比べても、映画界におけるプロレスのイロモノ的扱いってやつはかなり顕著です。プロレスラーうがー、血ぃブシュー、ヤクザヤクザ、八百長八百長。でも僕らは観たかった。そんなプロレスのうさん臭さ何もかも全て呑み込んだ人の描く、本当のプロレスヒーロー映画。『メジャーリーグ』での野球や『ロッキー』でのボクシングのように、「普通に自然にプロレスが題材とされている」“スポーツ”根性モノ映画。だってプロレスだけイロモノなんて不公平だもの。不公平ったら不公平なんです。そして今作は果敢にもそこにチャレンジしてくれているんです。

 しかもこの映画のエラいところは、『タイガーマスク』のようにプロレスを崇高なものとして捉えるのではなく、ホントにリアルに切り取ってくれているところなのです。この映画に出てくるたくさんの怪しげな人々。これは大げさでなく、プロレス界っていうのはホントにあぁいう人たちがたくさん集まって形成されているんです。今作は、プロレスファンの集まる飲み屋の空気、業界に巣食っているダメ人間たち、ダフ屋との距離感、そして何よりファンとプロレスとの距離感、そんなものを全て正しく切り取って、しかもそこに満載のプロレス小ネタを詰め込んでくれたんです。そりゃもうお話が普通でも許すしかありません。レスラーや関係者もたくさん出演してたしね。というかですね、これに低得点を付けることは、今後のプロレス映画の未来を閉ざすことになってしまう気がするのです。僕らの仲間が僕らの夢を叶えようと頑張ってくれた。同じプロレス村の住人としては、その心意気に応えないわけにはいかないのです。

 結局のところ、この映画は日本中にプロレスファンが5,000万人以上いれば大ヒットかつ高評価間違いなしの映画なんです。そして監督は日本中にプロレスファンがそんなにいないのを知ったうえで、それでも尚僕ら数少ないプロレスファンに向かって跳んでくれたんです。猪木の「道」を頭の中で一緒に朗読し、登場人物の着メロが誰の入場テーマかすぐにわかり、荒井社長や冬樹弘道やハヤブサの元気な姿に涙できる僕らは、その気持ちに応えなくてはならないのです。劇中で主人公がプロポーズに使う「僕のプランチャを受けてください」という台詞。相手を信じていないと跳べないプランチャという技は、そこに深い信頼関係があることを表しているのです。監督が僕らに向けて放ったプランチャを、僕らは受ける義務があるのです。

 でもホントにみんなもっとプロレスを観るべきだと思うんだな。そうすれば大概の問題は解決するんですよ。地球はもっと住みやすくなるに違いないんですよ。結局のところこれはそういう映画なのです。

 でも☆が4なのは、ラストのマイクアピールシーンで観客を置き去りにしてしまったことです。プロレスラーは観客の支持なしには存在し得ないのですから、やっぱりクライマックスは家族と観客両方を相手にしなくちゃいけません。というわけで、今作に続編を作る必要はありませんが、今度はもっとスペクタクルなプロレス映画を作れるプロレスバカの登場を願ってやみません。最終的にはハリウッドでブラピかキアヌ主演のプロレス映画が作られることが悲願です。

(評価:★4)

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