[コメント] やっさもっさ(1953/日)
この施設「双葉園」の女性理事が、主人公の淡島千景。その夫が小沢栄太郎だ。舞台設定はかなり異なるが、二人の関係は、同じ獅子文六原作、渋谷実による『自由学校』の、高峰三枝子と佐分利信に重なる部分が多い。淡島は『自由学校』では超現代的な女子大生を演じていたが、本作では打って変わって、商才のある、やり手の実業家だ。そしてその夫である小沢は、戦後の価値の転換についていけず、無気力に陥った無職の男で、映画の中盤で家出してしまう役なのだ。
という訳で、これも主人公夫婦の和解と再生の物語なのだが、ただし、本作で最も印象に残るプロットは、「バズーカお時」と呼ばれる街娼・倉田マユミと、黒人米兵のシモンと、その子供トムにまつわる部分であり、倉田の柄の悪いキャラ造型が突出しているのだ。開巻カットもトムであり、エピローグも漁村で生活するトムの描写で終わる。ラストの山道の階段を使った画面造型も見事だ。
あと、淡島千景は20代後半の美しい時期で、後半、双葉園でのサロンのシーンでは、胸上が大きく開いたドレス姿を見ることができる。これは眼福です。高橋とよとダンスするシーンから、酔いつぶれて高橋にかつがれ、布団へ寝かされるまでの演出もいい。
#その他の配役等を記述。
双葉園の園長は東山千栄子。施設は根岸(横浜)の森の中(丘の上)にある。施設の職員で若き山岡久乃と文野朋子。山岡の方が科白は多い。
淡島の学校の先輩で産児制限運動家に高橋とよ。『自由学校』といい、本作といい、高橋は、飛び道具のような極端なキャラ。高橋が連れてきたのは野球選手の佐田啓二。佐田の恋人に横浜駅のシュウマイ娘、桂木洋子。可愛い。
小沢が街に散歩に出る、と言って出た先で、伊勢佐木町商店街の看板が見える。小沢は、パンパンの英語の手紙の代筆をしている。彼女らの中に菅井きん。また、彼女らが集まる洋食屋の主人は山路義人。
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