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[コメント] まわり道(1975/独)

家来が増えていく道中記、桃太郎みたいだが鬼ヶ島を目指す訳でもなく。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







3部作のなかで一番好きだ。他2作に比して目的というものがなく、同じところを行きつ戻りつしているような停滞感がリアルで、乱入して詩の朗読を始めるデブ君、夢の交換や山道の散策など、茫洋としたシーンの数々が映画としてとても充実している。

しかし観終わって思い返せば、本作はひとりの孤独を味わうつもりが意に反して親密のなかの孤独を味わう、という話なのだった。自殺したおっさんが云ったように、ひとりの孤独など何ほどのことでもないのである。政治が語られるのもこの文脈からであろう。

「修業時代」は『喜劇 女は度胸』での清川虹子の名科白「涙と共にパンを食べた事の無い者は真実は判らない」の出典元。本作のヴィルヘルムもまた真実を手に入れるが、それは清川のように明快なものではなく、極く極く私的なものだった。漂泊の詩人へ向けての修業、であろうか。親から貰った金がなくなってからの顛末もみたかった。

(評価:★4)

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