[コメント] 沙羅の門(1964/日)
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団令子の好色も俺の影響だろう、お互い煩悩が過ぎてどうしようもないなあ、これからはお互い自覚してやっていこうや。森繁が云ったのはつまりこういうことだろう。性愛について男親と娘がこのように語り合うのは殆どあり得ない。それを率直に語ってしまった処に作品の挑戦と森繁の巧みさがあった。感激して追いかける団令子の気持ちがよく判る。冒頭から再々登場した涅槃の仏像はもういらなくなったのだった。
煩悩具足のうちに生きるんだという森繁。彼の軽みの造形は本作でひときわ素晴らしい。草笛光子と喧嘩して大勝ちしそうになると、ちょっとけつまづいたりする。観客は森繁の弱さを少しだけ感じる。こういう積み上げがとてもいい。また、仲のいい母と娘の関係がとてもいい。「貴女のいいお姉ちゃんになってあげる」「これからはお姉ちゃんを母さんと呼ぶわ」
ただ収束はよく判らない。草笛は内縁の妻なので母子が寺から追い出されるのだが、妻帯しなかったのは森繁の僧侶としての矜持とされる。しかしエロ坊主で全うするなら籍を入れてしかるべきだったのではないのか。死んでから嫁に迷惑かける信念はいかんだろう。この辺りよく判らなかった。ただ、宮口精二の本山でも口出しのできない、遠藤辰雄らとの地方の縛りというものが寺社の世界にはあるということはよく判った。遠藤は珍しく善人かと思いきややっぱり悪役になるのが愉しい。
禅寺は世襲ではないとされているがどうなんだろう、私の田舎の禅寺は世襲なんだが。漁港での盆踊りが美しい。大津SSはいまとおんなじだが、当時は最新だったんだろう。滋賀のウニってどこなんだろう。雄琴の傍とされているが。
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