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[コメント] 天使の肌(2002/仏)

どうも素直に受け入れられない作品。
ユリノキマリ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「この映画の原作と噂されながら、製作者サイドは完全否定」。その小説は遠藤周作の「わたしが・棄てた・女」だというのは、有名な話でしょう。

そうですねえ。好意的にいえば、結構よくある話だから偶然着想がかぶっちゃったとか、「わたし…」の内容を知った脚本家が誰かが(フランス語訳もあるようですし)、心や頭のどこかに小説の内容が残っていて、「無意識に」下敷きにしちゃった、とまあ、そんなところだろうと解釈します。

百歩譲って完全オリジナルだというのならば、「わたし…」のヒロイン森田ミツが、誤診のためにハンセン氏病の隔離病院に入院するという設定を、こちらもある種の絶望的状況、冤罪で刑務所行きという設定に“置き換え”られている無神経さに対する私の腹立ちは、全く無意味なものとなります。

何の罪もないのに病魔に侵され、恐らく一生退院できない人々と、罪を犯したから刑務所に入り、しかもいつかは出ていく人ばかりという状況と、同列にしていいものかどうか、悩むところでもありますし。

森田ミツもアンジェルも、神の存在には懐疑的だし、容貌もパッとしない。愛する男に愛されない。それでいて心意気は天使のようで、不慮の事故で亡くなるまで、病院(刑務所)のみんなに愛され、亡くなる直前には愛する男の名を呼んだ。

そんなミツ=アンジェルの人柄、生き方は、尼僧が筆を執り、もう無関係のはずの男に手紙として書き送らずにいられないような、そういうものでした…とさ。

男は、一度だけ寝た冴えない女に何らかの爪跡を残されつつも、人柄も家柄も申し分ない嫁も得たことだし、まーそれなりに偉くなって、きっとそれなりにジジィになってから、よくよく考えると天使のようだった女ミツ=アンジェルを無責任に懐かしんだりしちゃうのでしょう。それが、よくいるただの最低男吉岡=グレゴワールの「成長」にほかなりません。←映画でも小説でも、そこまで言及はしていないけど、容易に想像がつきます。

製作者サイドが否定しているのに、どうしたって並べて考えずにはいられないし、ストレスたまりました。

発想の目新しさやオリジナル感だけが映画のよさではないはず(その証拠に、実話ベースだとその作品の評価が上がるというという人が何と多いことよ)。原作だと敢えて決め付けて言うけど、せめて「ヒントを得た」くらいのコメントがあってもいいのにね。今からでも遅くないと思うよ。

(評価:★3)

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