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[コメント] 子猫をお願い(2001/韓国)

アバンタイトルは女子高生5人が港(運河の側)ではしゃぐ場面。本作は、この5人−テヒ、ヘジュ、ジヨン、双子のオンジョとピリュの卒業後の様子が描かれる映画。
ゑぎ

 見る前の想像と違い、子猫はそれほど大きな扱いではない。しかし、序盤でジヨン−オク・ジヨンが子猫を拾い、他の4人へ引き継がれていくという流れを持つ。また、5人の中で、主人公を一人に特定することは難しい(主要人物は3人だが)。アバンタイトル開けは、ヘジュ−イ・ヨウォンの家(アパート)の窓が割れる(部屋から何かが放り投げられる)ショットで、クレジットバックは、彼女が通勤するシーンであり、序盤は、証券会社の事務員(といっても雑用係)として一所懸命働くヘジュがフィーチャーされているように感じる。中盤になると、両親が他界し祖父母と暮らしているジヨンの家の状況(落ちそうな天井が怖い!)や職探しなどがメインのプロットと云ってもいいように思う。そして後半になって、ヘジュとジヨンの仲違いを取り持とうとする、一般的な感覚で一番友だち思いの(半面一番自由な気質でもある)テヒ−ペ・ドゥナが、やっぱり映画的な魅力のある人物として立ち上がってくる。

 一方、この映画はバスと携帯電話の映画だとも思う。バスは、テヒ、ヘジュ、ジヨンがそれぞれ単独で乗るシーンもあるが、双子のオンジョとピリュも含めて5人でインチョン(仁川)からソウルへ向かうシーンや、ヘジュが姉と別れる場面もあり、意識して繰り返し描かれている。また、携帯電話のメッセージによるコミュニケーション(文章)が画面化される場面も目立つ。それがバスの中で行われる印象的なシーンもあり、なので、ことさらに、バスと携帯電話の映画だと思われて来るのだ。ついでに書いておくと、テヒ−ペ・ドゥナが、肢体不自由者の詩人の口述筆記(タイプ)をする場面があるが、このシーンの文字の見せ方もよく考えられている。

 というようなことも含めて、全体にとても肌理細かな繊細な演出を感じることができる映画だ。技巧的にも、要所で挿入される緩やかなディゾルブ繋ぎやスローモーションが、ことごとく決まっていく心地よさがある。いやそれ以上に、5人の女性たちの画面への出入りのコントロール、科白や所作が見事な演出だ。実に良く出来た映画だと思う。

(評価:★4)

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