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[コメント] ソウ SAW(2004/米)

見ている間、この映画に精神を委ねているその時間が楽しくてたまらなかった。無意識に奥歯を噛み締め、鑑賞後、顎が疲れて歯が痛い。その痛みがこの映画の面白さ。詰めの甘さは否めないが、ソレを凌ぐパワーを俺は感じた。大甘★5 2004年12月13日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







一瞬の大音響とガチャガチャ人為的に操作しまくったスタイリッシュ気取りの早回し映像に、驚異の超強引どんでん返し。うーん、強引。稚拙と言えば稚拙なのかもしれないけど、コレだけ観客を引っ張る力があるのは凄いと思う。

ただ、犯人があの人間にして、被害者全員に共通点が無いのが不自然。いや、勿論描かれて居ない所で共通点(例えば犯人の周りの人間、とか)はあるのかもしれないけど、映画にそれを描かない事には説得力が生まれない。「怠惰に生きて、生の悦びを軽視している」と言う狂信的で一方的な自己満足的モラルだか倫理だか、とにかく勝手な物差しの元で、あぁも計画的に人を裁く事は出来まい。

それから、あの犯人のハゲ、ずっとあの浴室でぶっ倒れてたんだろ?何時間だ?少なくとも6時間ぐらいずっと奴らを監視してたわけだ。ぶっ倒れて。随分暇だな。っていうか凄い忍耐だ。ちょっと強引じゃないかなぁ、アレ。

いや、既に書かれているのだけど、確かに「死体が起きる」「犯人は意外にに近くに」と言うインパクトは強烈な物があって、俺も鑑賞中は「やられた!」と膝を叩いたのだけど、後々考えれば何の事はない。インパクトはあっても、そこに説得力は無い上に、驚いてるのが無関係の男の方、と言うのがどーしょーもない。まぁこの映画は恐らくそういう細かい事よりも観客を楽しませる事を第一に考えてるのだろうから、そういう意味でその目論見が見事に成功している点には俺は感心してる。

だって実際に俺は、犯人はあの清掃員ってずっとめぼしつけて映画見てたんだし。ま、1カットしか写らない奴が犯人でしたー、と得意気に伏線を解説するのは、卑怯と言えば卑怯だと思うけど。

あーそうそう、それからさ、あの唯一の生存者って女性だけど、ヘッドギアつけて、「目の前の死体の胃袋に鍵がある」ってゲーム、少々他の方々と比べて楽すぎはしないかな?いや、多分俺自身、あんなゲームやらされたら泣きながらションベン漏らして、とっとと顎が吹き飛んでゲームオーバーなんだろうけどさ・・・

まぁとにかく、とにかくだ、文句は無茶苦茶あるのだけど、低予算で(とか言いながら懐かしい!ダニー・グローバーが出てる!ってあの人、こんなにデカい人だったんだ・・・)アイデア勝負で・・・ってほんとにアイデア勝負なんだけど、まぁアイデア勝負で、よくもまぁココまでひっぱたなぁ、と俺は心底感心してる。コレが新感覚がどうかは別として、本当にコレは純粋なスリラーだと思う。キャッチコピー通り『CUBE』×『セブン』と言う感じ。まぁ実際は違うけど。

最初の内は、そのうるさい大音響に「うーアメリカ映画だ・・・」と耳を押さえて苛々して、その映像のガチャガチャ操作した感覚にうんざりしていたのだけど、コレが中々上手く作用していると言うか、恐らく監督はそこまで意図しては居ないと思うけど、それが作品の薄っぺらさを補って余るほどのパワーを抽出してるんだから、びっくり。きっと、作り手は「クールだぜ、メーン」とか言って大喜びしてたんだろうけど、それが如何にも良くも悪くもアメリカ的と言うか、スリラーに対するそういう安易な姿勢が上手く作用した、と言う印象。

そのパワフルでストレートでエネルギッシュな、まだまだ洗練されきって居ない演出が、何か味があって凄くいい感じ。物語の加速を上手く手助けしている。

もう、あれだ。足をのこぎりで切断する所の演技なんて、イケイケで、「うひょひょひょ!!!いけいけいけやれやれ!」と一人熱狂して熱狂して・・・わはは(意味不明

まぁ後は不気味な物を上手く配し、例えばからくり人形とか、そういうのが作品の雰囲気を上手く組み立てている。そして、伏線を散りばめながら割りと丁寧に回収している点にも、恐らく作り手はどんでん返しで驚かす事しか考えてなかったんだと思うけど、中々関心した。

クライマックスの一気に加速して畳み込んで行くスピード感溢れる展開は実にSAW快で、見ている間は十二分に振り回され、非常に楽しかった。見事なジェットコースタームービー。

監督、次回作はどうなるのか知らないけど、M・ナイト・シャマランみたいにどんでん返し一辺倒(と言っても『ヴィレッジ』ではドラマを重視したけど)に陥らない事を祈るのみ・・・とは思うのだけど、どうも作品を見た感じ、調子付いてこのままこの手の作品ばっか作り続けそうな気がして怖い。だってこの作品、ドラマが無いんだもん。

「生をむさぼるだけの惰性の日々を送る奴に正義の鉄槌を」と言う犯人の動機も、製作者の若さ、と言うか青さの表れに思えるし(お前が言うな>俺)。

(評価:★5)

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