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[コメント] 悲情城市(1989/台湾)

確かに、シャオシェンらしい定点的な撮影が目立つ。例えば、診療所のロビーにカメラを置き、玄関から表を撮ったカットや、朝鮮楼などの飲み屋が並ぶ、斜面の山側から撮ったカット。
ゑぎ

 トニー・レオン達の実家の屋内も、いくつかの定点的な位置で撮られているが、緩やかなパンニングで見せるカットも多く、こういうのは固定ショットとは云わないし、私には、動きの少ない映画とは思えなかった。また、山上から山道を撮ったロングショットは、複数人が歩くショットで、アンゲロプロスみたいだし、屋外での立ち回りも、かなりのロングショットでの長回しだが、動的なカットばかりだと思う。

 本作では、レオンは聾者の設定で、基本的に会話は筆談で行われる。男たちが集まって政治の話をするかたわらで、シン・シューフェンと、二人他愛もない内容の会話をする場面はいいシーンだ。筆談の内容をいちいち画面に(サイレント映画のように)字幕で見せるのも、いいリズムが生まれている。ゴダールみたい、と云うと云い過ぎだが。

 ちょっと映画の話ではなくなってしまうが、レオンの耳が聞こえなくなったのは、8歳のときに木から落ちたのが原因、という説明がある。しかし、彼は全く喋らない。少なくも、劇中は唖者のようで、8歳での途中失聴者とは、とても思えない(ま、大した話じゃありませんが)。

 さて、やはり本作の良さは、何と云っても終盤からラストへ向かっての、家族の崩壊とその顛末を描く、突き放した視点だろう。そして、お祖父さん、リー・ティエンルーの存在と見せ方だろう。エンディングのレオンの扱いもいい。ただし、私はちょっと期待過多で見てしまった。『恋恋風塵』を超える興奮を期待していたのだ。私の好みで云うと、この題材なら、もっと尺を取って、例えば日本人の校長家族を描き込む等ができていれば、と思ってしまい、残念な感覚も強い。

(評価:★4)

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