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[コメント] ポーラー・エクスプレス(2004/米)

メッセージ性は絵本のままの方が上だった気もしますが、映像は文句なし。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 出来として、絵本らしい教育的なお話に仕上がっているが、主人公が本当に等身大の子供だという所が面白い所(だから主人公には名前がない)。夢見がちな子供もいつかは大人になっていく。その過程で切り捨てるべきものを切り捨て、自分の生きるべき道を見つけていくことになる。然るに、その中で切り捨てるべきものとは一体何であるのか。それを突きつけられる事になる。サンタというのはその典型的例だろうが、本作ではその子供の夢を肯定しつつ、大人になる。という過程を描いた作品だと言えるだろう。

 そして本作の面白さは子ども達の冒険だけじゃなく、ポーラー・エクスプレスの車掌の魅力があるかと思える。本作はファンタジーでありながら子供にかなり厳しさを求める。ついついこの手の作品だと優しい大人を求めるものだが、車掌にはそれがないため、ちょっと怖そうに思えてしまう。子供の都合で列車は運行を止めたりしないし、失ったものを取り戻すためには対価を支払わねばならない。その現実を突きつけてくる。車掌はその意味で大人そのものと言うよりは、“現実”の擬人化であるとも思われる。現実は確かに厳しい。しかし、だからといって意地悪ではない。融通は利かないが正しい努力に対してはきちんと応えてくれている。その厳しさの中で、仲間と共に友情を深めてみたり、冒険をしてみたり。時にそこから一歩出なければ、友達を救えない所に追い込まれてみたり…まあ実に設定は上手くできた作品じゃないだろうか。

 ここに出てくる少年達は何かしら現実で傷を持ち、そこから大人になろうとしている子たち。大人になるためには克服すべき課題を持った子供達とも言える。現実に押しつぶされそうになった時、信じる心を持つ。何かを犠牲にしても、それを突破しようとする心を持つ。それが成長であると描かれているのだろう。

 その辺のメッセージ性は実は絵本そのものよりもかなり薄れてしまっているのがちょっと残念な所かな?

 ただ、その分映像の迫力は並じゃないけどね。3Dアニメはキャラクタの質感が軽くなってしまうのがネックなのだが、本作では非常に“重さ”を感じる。その重さが疾走するからこその迫力だろう。ポーラー・エクスプレスの動きは一見の価値あり。重さを表現するためか、人間の表情が今ひとつ硬いのがちょっと気になってしまうけど。

(評価:★3)

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