[コメント] オールド・ボーイ(2003/韓国)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
何ともこれは凄い作品だ。いや、凄いというのは、この作品が韓国人監督の目に留まり、それを映画化すると言う時点で凄いと言うこと。
本作は近親相姦をネタにしている。デスに対して復讐を誓うウジンは、姉の死はデスにあるとしているのだが、その自殺の原因を作ったのはそもそも弟であるウジンにある。 韓国、いわば朝鮮の文化圏は儒教の国。ここでは近親相姦は最大の罪として見られている。同じ姓を持つ者同士が結婚することさえ認められない時代もあったそうだから徹底している。
だから近親相姦というのは、物語としては大変なタブーを前にしなければならないため、こそイム監督は敢えてセンセーショナルな題材を敢えて用いたのだろう。
ウジンの行っていたのは一見効率の悪そうな復讐劇で、回りくどいやり方でデスとミドをくっつけようとした。その課程で自分の存在がばれようが、たとえ殺されようとも構わなかったように見えたし、なんと最後は肉体関係を結んだ後でデスとミドの関係を明かした後、ご丁寧にもデスの記憶を消してさえいる。
それが何で?お姉さんが死んだのは自殺だろうし、ほんのちょっと関わっただけのデスを殺すにしても回りくどすぎはしない?とも思えるのだが、実は既に姉が死んだ時点でこの世に何の未練も持っていないウジンにとっては、そんなことはどうでも良かったのだろう。姉が死んだのは自分自身のせいではなかった。彼が最後まで救いとして求めていたのはそこにあったのだから。
デスを標的に選んだのは、ウジンと姉の関係を知っていたからだし、彼が二人の間に割り込んできたから姉は死んだのだ。と言うことを自分自身に納得させる為だったとも考えられる。
ウジンはこの世の栄光や成功なんて同でも良かったのだ。ただ姉が死んだのは自分のせいではなかった。と自分自身に納得させたかっただけ。そして姉をしに追いやった男には、近親相姦という枷をおわせ続ける。彼にとってはこれだけが生きている目的だった。
それで15年もかけ、デスの娘が成長するまで待ってから復讐を遂げる。
結果としてデスとミドは幸せな恋人同士となっていく。ただ二人の間では幸せなんだろうけど、二人が幸せになればなるほど、罪を重ねていくことになっていくのだ。
そしていつか催眠術が解け、あるいは何者から真実を付けられるその時、二人は重大な罪を自覚することになる。しかもその責任を帰すべき相手はもうこの世にはいないのだ。
なんとも皮肉めいた復讐であり、後味の悪いハッピーエンドである。まるで「オイディプス王」の物語だ…見ようによっては「源氏物語」の葵の君の話とも言えるけど。
もちろん本作はそう言う設定だけで見る作品では無かろう。フィルムノワールの雰囲気をたっぷりとまといつかせつつ、主人公デスの復讐劇の到達点がどこにあるのか、全く飽きさせることなく最後までしっかり観させる。様々な要素をバランス良く詰め込んだ良作と言えよう。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。