コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 犬猫(2004/日)

坂のある住宅街、電車の側の道(こゝも緩やかな坂がある)、大きな土手のある公園など、ロケ地がいい。このロケーションだけで面白さが決まったようなものだろう。屋外はどのシーンもいいけれど、それは、西島秀俊のアパート近くにある長い下り坂を藤田陽子が駈け下りるシーン(2度ある)のような分かり易い部分もそうだが、
ゑぎ

榎本加奈子忍成修吾(三鷹君)と度々出会う住宅街のロングでの人物の押さえ方なんかもいいのだ。のどかな空間が、不思議なオフビートの緊張を醸成する。或いは冒頭、西島のアパートの場面で始まるが、いきなり小池栄子の家、その縁側の窓のカットが繋がれるので、これは隣の家か?と思った。すぐに全くの遠隔地であろうことを了解するが、この時点で、本作はこのような云わば不親切ともいえる、唐突なアンマッチカットで生じる緊張感と可笑しみを狙っているのだろうと予測した。可笑しみと云う点においては実に機能していると思う。最も可笑しかったのは、ラジオ体操が行われている公園のシーンで挿入される犬の正面フルショットだ。

 さて、少々がっかりした点もあった。一応せっかくなので記載しておこうと思う。それは、榎本加奈子と藤田陽子の関係の生ぬるさが暴露されている部分なのだ。プロット構成やキャラ造型上で云えば、榎本は藤田を憎んでいたのだが、だんだん懐柔され少し気を許す、といった描写の中で、榎本が撮影外での藤田に対する馴れ馴れしさを撮影中も垣間見せるように思える、ということだ。この2人の関係のスリリングさが本作の一つの見どころだなのだが、だからこそ、時折見せる即興演出っぽいシーンのベタベタした雰囲気に違和感を持った。この関係の暴露こそ、類例のないスリリングさだ、という意見もあるかも知れないが。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。