[コメント] バナナ(1960/日)
尾上の妻(日本人)が杉村春子で、普通なら淡島千景の役柄か。「美人でお金持ちのマダム」という形容が、中盤の仲谷昇の科白である。でも、本作の杉村も、終わりかけには綺麗に見えて来るから不思議だ。
映画は尾上の息子・津川雅彦と、ガールフレンド・岡田茉莉子が、バナナの輸入で一攫千金を狙うお話となり、主導するようになるが、しかし、全体を通じて、尾上が主役と云っていいだろう。テンポのいい場面転換は興味の持続に繋がっているが、少々散漫な印象も受けてしまう。
しかし、岡田は本作でも、その早口の口跡がいい。岡田の父親が宮口精二で、バナナの仲買商という役柄だが、こちらも同じように、いい台詞回しで気持ちがいい。
『自由学校』や『やっさもっさ』でもそうだったが、本作でも夫のいる杉村の火遊び未遂が描かれる。その相手がシャンソン歌手の仲谷だ。箱根の夜、展望室で密会をする場面での仲谷の反応も楽しい。
本作も全般に、実にきめ細かいカッティングだ。屋内のアクション繋ぎ、ポン寄りが目立つ。ラスト近くの豪邸内での、尾上、岡田、杉村、三人のカットでのポン引きなんかも、ばっちり決まっている。
#備忘でその他配役等を記述します。
ナレーション担当と謎の台湾人青年を演じるのは小池朝雄。渋谷の喫茶店のような溜まり場は伊藤雄之助がマスターか。壁に『王子と踊子』のモンローのポスターが貼付されている。
岡田の家は横浜にある。お父さんが宮口で、お母さんは桜むつ子。神戸に住んでいる津川の叔父さんは小澤栄太郎。先祖が建てた邸へ案内される。
シャンソンを聴く会。こちらの壁には『大人は判ってくれない』のポスター。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。