[コメント] 多羅尾伴内(1978/日)
本家の千恵蔵作品も大した推理劇ではなく面白いのは千恵蔵の親しみやすいキャラだったものだ。本作もこれを踏襲。七変化は旭ファンでなくても愉しめる。筋とは関係なく、キャバレーで白いギター弾いて唄う「昔の名前で出ています」が素晴らしい。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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夏樹陽子のもみ消された交通事故の復讐。アイヌが信仰する魔人、チロヌプカムイとは狐の神の意。カムイ外伝のカムイとは神のことだと初めて知った。このお稲荷さんの灰色の顔した狐に似ている、狐男が大量に出てくる。祭壇に祈るシムカニ媼は原泉さん以外に考えられない。
しかしあんまりアイヌには密着しない。奈良吉野からやって来た加害者の濡れ衣着せられる男の妹のやたら別嬪な竹井みどりとともに吉野対アイヌという図式が浮上するが、特にそんな展開はない。残念なことだ。多羅尾伴内って民俗学を浅く掬ったような大正風の不気味な味付けが明智小五郎シリーズと似ている。
毒薬つくっている夏樹陽子の、ブラウン管の向こうのプロ野球やアイドルへの呪詛が生々しい。三崎奈美のアイドルの舞台での血まみれ殺害や自動車事故の轢き殺し直し、ウェディングケーキからの血しぶきとスプラッターな残酷シーンの連発。これもひとつの階級闘争であることか。斜陽の映画産業の呪詛でもあるのだろう。
謎解きはどうでもいいようなものだが、ここが池辺良の見せ場なんだろう。旭が北海道を運転中後ろから魔人に掴まれて格闘して谷底へ転げるときのキャメラの傾け具合がスリリングで実にいい。アン・ルイスの名曲「甘い予感」がサワリしか唄われないのがとても残念。
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