[コメント] ブルーベルベット(1986/米)
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63年のヒット曲「ブルー・ベルベット」をフューチャーした作品で、リンチ作品としては比較的初期に当たるが、演出は相変わらずで、狭い空間からの覗き趣味や、赤いベルベットのカーテン(表題とはかなり皮肉なんだが)、容赦ない暴力にさらされ破壊される肉体、耽美的展開と、まさしくリンチ監督が好むフェティ的演出が延々と続く。
一応物語はヒッチコックが得意とするいわゆる“巻き込まれ型”のサスペンス。後年の意味を失った悪夢世界の描写とは異なり、基本的には物語に重点を起ているため比較的分かりやすい物語に仕上げられているのでリンチの諸作品の入門編としてはうってつけな作品とはいえよう。だが、理不尽さはやっぱり健在。
通常のこの手の作品だと、主人公の行動にはきちんと意味を持たせ、それが観ている側にも分かっていると言う暗黙の了解があるが、リンチ作品の場合は主人公が刹那的な行動ばかりを繰り返し、観ているこちらが、その意味を見いだすことが出来ないのが問題。一体こいつは何をしているのか?観てる側にもそれが分からないので落ち着かなくなるし、主人公は何をなせばこの迷宮から逃れられるのかまったく提示されず、ひたすら悪夢の中をあがき続け、偶然が重なった結果生還する。それがたまらなく観ている間落ち着かない気持ちにさせてくれる。
その落ち着かなさこそがリンチ作品の醍醐味だと言えるし、一見破たんしてる物語をビジュアルでここまで見せることが出来るのもリンチならでは。
その演出と、ホッパーやロッセリーニの怪演ぶり、どこかに病んだ表情をみせるマクラクランの演技もあいまって、一風変わった作品に仕上がった。ここでのキャラの個性は他のリンチ作品と比べても抜き出ている。
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