[コメント] ダブリン上等!(2003/アイルランド=英)
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2005年のパンフレット購入第一号作品!
単なる群像劇ではなく、群像劇が「アイルランドの若者縮図」を導き出しているのだ。元々は11のストーリーに54の登場人物が用意されていたという。もし、これらが忠実に描写されていたらスゴイことになっていたはず。単純な自分がダブリン市民を模擬体験できていたかもね(笑)。いや、それでもこの作品だってナメたもんじゃない。むしろ、54人のストーリーが凝縮された濃厚な内容なのかも。
車椅子のおっちゃん、悪ガキ、ヘンダーソン支配人を含めると14人の主な人物のストーリーが展開されていく。強盗団の3人を軸に、デイドラや刑事のジェリー、更にはジョンの親友オスカーなどの人物が見事に本筋へと絡んでくる。この脚本の見事さといったらかなり大したもの。低賃金に耐えながら生活する若者、チンピラからの脱却を図ろうとする男、中年の危機を迎えたハゲ親父と、別れを告げられたその妻などなど…。決して裕福ではないし、心だって満たされている訳じゃない。しかし、彼らは生活しなければならないし、ビッグな夢じゃないけれど目標だってあるのだ(オスカーの精力回復を含め)。
「アイルランドと若者」といえば『ヴェロニカ・ゲイン』でも語られたように「深刻な麻薬汚染の過去」が真っ先に思い浮かぶ。この物語はそういった背景を巧妙にリンクさせており、アイルランド国内の様子を間接的に描いているとも思える。刑事ジェリーの行き過ぎた犯罪浄化や、女にも容赦ないレイフの言動はその一部にすぎない。
ラストは決して気持ちの良いもんじゃない。レイフは理想的な家庭を築けなかったし、悪ガキは悪ガキのままだし、しがないサラリーマンのヘンダーソンはお先真っ暗。そもそも強盗団は大金を奪取できないわけで…ミックは大怪我を負う始末だ。明日は今日と何ら変わりない一日が訪れるのだろう。まぁ確かに念願の恋人を手に入れたオスカーやサリーはちょっとした幸せを掴み取ったわけだ。そんな、彼らの結末がアイルランドの縮図なのかな…?とちょっと思ったり。。映画的な演出を除いても、俺は十分にそれが言えるのだと思う。
アイルランドやスコットランド出身の俳優達も素晴らしい。特に国外で活躍をしても尚、故郷を愛してやまないコリン・ファレル、キリアン・マーフィ、シャーリー・ヘンダーソンといった若手俳優達の好演が印象深い。
やっぱり俺は日本人として、邦画にもこういった作品が生まれることを願う…。
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