[コメント] 影なき声(1958/日)
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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まずは南田洋子さんである。元電話交換手の役柄で、彼女の耳がこのドラマの大きなポイントとなっている。とにかく南田洋子さんの品のある演技が魅力的で惹きつけられる。この映画の前半の主役であるが、夫がだまされていることを察しつつも、尽くそうとするその姿が健気だ。今もお美しいが、当時の美しさは必見だろう。
そして鈴木清順監督の演出も見事だ。細かい点でいくつも評価できるシーンがあるが、南田洋子さん演ずる朝子が、宍戸錠演ずる愚連隊の電話の声を聞いて、それが殺人犯の声であることに気づくシーンがあるが、この時の彼女の背に般若の面が壁につるされている。このシーンの象徴性が見事だ。般若の顔が光照らされ、これがそのまま朝子の内面の心理を表現している。
それと後半でビリヤード屋を経営する芦田伸介演じる村岡が逃走しようとするシーンで鏡が見事に使われている。割れた鏡に映るその恐怖。描写としては見事だ。
当時の風景も懐かしい。小平霊園付近が殺人の遺体遺棄された場所となっているが、今は失われた平原が見渡されていたり、当時の風景が映し出されている。
松本清張の計算しつくされたサスペンスドラマとしての面白さと、芸術性や映画的な世界を映し出そうとする鈴木清順の演出は、ある意味ミスマッチであるが、このモノクロの映画ではそれが実に美しく、嫌味もなく表現されていたと思う。
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