[コメント] ともしび(1954/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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内藤武敏の先生と児童は最初に理想を語り合う。いつも赤ん坊背負っている松山梨絵子(この娘がいい)の語る、託児所がほしい、から始まって、無償の病院まで。教科書を持ってこれない児童は、内藤が辞めさせられてから試練に立たされる。我々は教科書を無料で貰ったし、病院は保険で安く診てもらえるようになった。本作のような理想は相当に実現しているのだ。一か零かではなく、当時の理想は随分と理想は達成されたのだ。
内藤が辞めさせられるのは実話なのだろうか。先生に意見を云った児童は「お前はアカか」と云われている。アカとはそのように上司に意見したら使える魔法の言葉だという定義がなされている訳だが、いまの学校で意見を云うのは奨励されているだろう。何よりこの児童たちの、周囲の矛盾に目を向けて生き生きした処が素晴らしい。世の中はよくなっているし、それは内藤のような先生のお蔭なのだと知らされる。
農地解放の後も元地主は威張っていて、元小作は借金が返せていない、という状況が描かれているのが興味深い。篤志家のパターナリズムの限界を描いて正鵠を得ているだろう。加藤嘉の嫌味な校長は素晴らしい造形で、ああいう児童生徒の嗅覚で保身に身をやつしているとバレバレな阿呆のような先生はいたものだ。胸像になって笑われる花沢徳衛は代表作なのだろうか。老け役でない北林谷栄が希少。
貧困については、農村が崩壊して子供が労働力ですらなくなる以前の状況の記録なのだろう。ここから始まって、工業化は日本の貧困の質を変えていくことになるのだろう。ホンは井出敏郎、ナルセっぽさがある。ベストショットは教室の床掃除を片足で雑巾掛けするショット。私もよくやったもので細かさが嬉しい。子供の喧嘩のシーンも本当に田んぼに真っ逆さまに落ちておりスリリングだった。香山氏の回顧はDVDで観れる。
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