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[コメント] お父さんはお人好し(1955/日)

シリーズ第一作。大阪の町の大俯瞰、大阪駅からのパンニングにクレジットが入る。タイトルには「NHK連続放送劇」と付記されている。シリーズは全7作あり、最初の5本は大映(京都)作品で、6作目7作目は東宝(宝塚)映画。
ゑぎ

 タイトル音楽はマンボ。助監督は池広一夫とある。クレジット開けは、天下茶屋の商店街の俯瞰。こゝにある果物屋が舞台だ。まずは、近所の酒場での結婚披露宴のシーンから始まる。花菱アチャコとその妻−浪花千栄子が家族の紹介をする。新郎は、次男の清二−夏目俊二だが、子供は全部で13人ある。皆、東海道の町(駅)にちなんだ名前が付けられている。新婦の兄−堺駿二が変な(奇声を上げた)笑い方をして目立つ。13人の子供のうち、主だった配役を記しておくと、長男の米太郎は伊沢一郎、次女乙子が、桜むつ子、ちょっと飛ばして、五女静子は、中村玉緒だ。長女京子は朝雲照代だが、東京に嫁いでおり、中盤になって登場する。

 本作では、長男の伊沢と近所の洋品店の娘−阿井美千子との恋愛の行方、阿井の母親−初音礼子とアチャコらとの養子・嫁取りをめぐる駆け引き、初音の甥?−益田キートンの桜むつ子への岡惚れの顛末、そして、堺駿二のアイデアによるアチャコの事業拡大(アイスキャンデー屋の開業)などなどが織り込まれる。

 13人の子供には、育ち盛りの小さな子供もおり、そこに、桜むつ子の子供、一郎も加わって、画面の中で暴れ回る。これらの場面では、この一郎の振る舞いがシーケンスのオチとして反復されるのが面白い趣向だ。例えば、冒頭の結婚式の日の最後に、子供たちのかくれんぼで、一人いない、と大騒ぎになるのだが、冷凍庫の中で凍っている一郎が発見されてフェードアウトする。

 あと、中村玉緒の見せ場はワンシーンのみだが、家の二階の部屋で、マンボ・ジャパニーズ・エッサッサという歌詞を唄いながら踊る場面が与えられている。子供たちが踊り出し、アチャコと浪花も踊り、店の前の道の人々も一緒に踊るナンセンスなシーンになっている。また、このダンスのせいで、二階の部屋の床には穴が開き、一階の部屋に通じることになる。この不思議な設定が、この後もコメディとして機能する。

 全体に、浪花千栄子の見せ場が少ないと感じたのが、残念なところだが、終盤、アチャコがバナナの取引で詐欺にあった場面で、浪花がアチャコにもたれて泣くシーンは、本作の中で、一番しっとりとした良いシーンになっている。こゝでは、ゆったりとしたドリーが使われている。

#備忘でロケ地等を記述します。

・伊沢と阿井が待ち合わせる公園は住吉大社に隣接する住吉公園だ。子供が喧嘩して、アチャコが住吉警察署に引き取りに行く場面もある。天下茶屋から住吉って結構遠いよ。

・舞鶴での復員者の帰国場面は、当時の記録フィルムが使われている。

・大丸百貨店内はセットか?カルピスの売り子が出てくる球場は甲子園か。道頓堀戎橋を逃げる泥棒が、中之島辺りで乱闘になる、という繋ぎもある。

・ラスト、トニー谷がカメオ出演。

(評価:★3)

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