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[コメント] パルチザン前史(1969/日)

「暴力は悪じゃないよ」
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







滝田修(竹本信弘)を中心に、京大闘争を記録する。冒頭の日比谷公園での全国全学連集会、いきなり内ゲバ喧嘩が始まる。パリ5月革命の祝祭的な大同団結との違いに、まず暗澹とさせられる。

京大の構内で、全学連がラジオ体操したり火炎瓶作ったり(とても実用的)する。『中国女』(67)や『東風』(69)との照合が思い浮かぶが、ゴダールのような冗談や挑発はない。この作品、挑発的なタイトルに反し、ドキュメンタリーの節度を守り過ぎるほど守っており、肩入れした視点がない。このため、当時の貴重な記録として淡々と鑑賞できる。

連中は公道を封鎖し、警官隊とやり合いを始める。火炎瓶飛び交い、警官隊は放水で対抗、迫力の映像だが、なんで公道封鎖を画策せねばならなかったのか、よく判らない。要人が通過することになっていたのだろう。

「暴力は悪じゃないよ」「俺達は暴力を操作できていない、暴力が俺達を操作している」と夜の講義室で弁ずる滝田は、とても魅力的な人物にみえる。個人的には某市長が想起させられ、こういうお喋りキャラが時代を牽引するのは世の常であると確認できる。後年彼は革命(テルアビブ空港乱射事件や朝霧自衛官殺害事件)の非を認めており、本作は失敗した「前史」として対峙すべき作品である、当然。

(評価:★4)

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