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[コメント] 海を飛ぶ夢(2004/スペイン)

逃げられる幸せと、逃げられない不幸せ。逃がさない愛と、逃がす愛。
Lostie

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







やはりハビエル・バルデムによるラモン・サンペドロが面白い。まるで全てを達観したようにいながら、実はすぐにひねくれてしまう偏狭な人間、という非常に見応えのあるキャラクターである。四肢麻痺の人間「ならでは」のジョークも多彩だ。「起きてコーヒーを入れよう」「抱きしめてやろうか」などなど。・・・26年。ジョークを考える時間はいくらでもあった、ということでもあるのだろう。

一階のフランシスコ神父と二階(天国、死の象徴?)のラモンの議論は、アンドレスという「健常者」を介させることでクソ真面目なシーンになることを避け、深みが増している。結局、答えが出るわけではないのだが(当然)、非常に興味深いシーンだと思う。

多少、空気が読めないロサも忘れてはいけない。彼女はラモンとはじめて会った際に、彼にとっては耳にタコができるぐらい何度も聞かされてきたであろう、楽観的なアドバイスをしてしまう。「挫折感に満ちたつまらぬ女」・・・それがラモンの返答だった。

それを機に(?)ロサはラモンへの執着を強めていく。が、献身的な介護をする義姉マヌエラや弁護士フリアがいて、なかなか自分の「存在感」を示せない。そして最終的に、恋敵(そこまで単純な関係性ではないだろうが)であるフリアが「出来なかったこと」を自分がすることでラモンへの「愛」を表現しようとする。ラモンも、あえてその「愛」を利用する。それほど死にたいのだ。そしてお互いの「本心」を理解したうえで、愛し合えたふりをする。あまりに哀しい。

ロサの唇はラモンの唇を通り過ぎて、額へ。恐らく、ラモンが本当に愛している女性が誰なのかをわかっていたから、そうしたのだろう。最後の最後に、哀しすぎる「空気の読み方」だと思った。

(評価:★5)

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