コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] サマリア(2004/韓国)

パッケージの2人のルックスと「援助交際をする女子高生」というコピーにひかれて見たけど・・・傷を負いました。ぐふ
かねぼう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ラストシーンを見て鳥肌が立った。 そしてこの監督の映画は全部見なければならない、と思った。

父と娘の関係は、しばしば複雑なものであると言われる。 その根底にあるのは、父は娘を誰よりも大切にし続けるという事実。そして、そうでありながら、娘は成長するにしたがっていずれは父の元を離れなければならないという事実。 この映画の話の軸は、父と娘の離別だ。ただ、キム・ギドクはそれを相当な変化球をもって表現してみせた。 何しろ2人に罪を背負わせることで、両者の関係を極限まで追い詰めてしまうんだから。娘には“援助交際”を。父には“殺人”を。 そうすることでこの映画は、尋常じゃないほど緊迫した空気を醸し出す。罪を背負った2人の行く末はどうなるのか。ただでさえ不安定な関係にある父と娘なのに・・・そして観客の頭の中にはストーリーが進むにつれて、「死」の文字が浮かび上がるのだ。

そこであのラストである。 父親が娘を殺すシーンを差し挟むことで、観客は「ああ、やっぱり」と思う。そしてその後、それが娘の夢であることが明かされ、あの象徴的なラストシーンへと・・・ キム・ギドクは観客の心を見透かしていた。そして、私たちの予想を見事にかわして、そんなありきたりなラストなどをはるかに上回る結末を観客へと突き付けて見せたのだ。

まるで生まれたての生き物のようなふらふらした足取りで進む娘の車は、彼女の再生を、、、そして警官に連れていかれた父親は(彼はおそらく自首するのだろう)、彼の再生を示している。 さらにあの夢を見たのが、娘である、という点も見逃してはならない。つまり娘の想像は、実際の結末には及んでいなかったのだ。娘は心のどこかで、死を予感していたのだろう。しかし実際はそうはならなかった。父親があの行動を実行したからである。 僕はここに父親の、父親としての大きさを見て、心が震えた。

ただ「2人の関係が切れた」という結果に終わってはつまらない。それは結局のところ“死”に近い、いや、それよりも煮え切らない、何とも中途半端な終わり方である。 あの極限まで行き詰った2人の、“再生”を匂わせてこそ、観客を驚かせることができるのだ。 キム・ギドクは見事にそれをやってのけた。父親の像に迫りつつ。自動車を用いて。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)moot

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。