[コメント] 女吸血鬼(1959/日)
テーブル中央にケーキが置かれたあとのトラックバック。ケーキ及び池内の左右にパーティ参加者をずらっと並べた、シネスコ画面を見事に使ったシンメトリーな横の構図に惚れ惚れする。なんと端正なショットの連続。
役者に関しては、まず畢竟のハマり役と云ってもいい天知茂については、もう私が言及する必要もないと考える。彼と対になるような存在で、20年ルックスが変化していないという池内の母親役−三原葉子は、実は、期待していたよりもおとなし目だったという感覚だ。乳房の下部を出した絵のモデル場面や、すけすけの着物を着て歩き回るシーン、天知から太い燭台で、いたぶられる場面など、エロティックな見せ場はあるが、いまいち存在を主張しきれない演出にとどまっている。
この妖怪2人と対照的なコンビが、池内とその婚約者役の和田桂之助(和田孝)で、プロット上は池内と和田が主人公と云っていいだろう。私は和田の爽やかな笑顔もヒーロー役らしさが溢れていて良いと思った。あと、池内の父親(三原の夫)がちょっと老けメイクの中村虎彦(中村彰)、執事(池内は爺やと呼ぶ)が林寛、というのも良い配役だ。林寛は序盤しか見せ場がないが、中盤移行も活躍して欲しかったと思う。また、終盤の島原(長崎県)の場面になって、突然プロットを引っ張り出す、三百万円を盗んだ泥棒役は、国方伝だ(田中絹代の『恋文』では道三重三という名前だった)。この人の扱いも嬉しかった。
そして、天知の助手のような、いつも一緒にいる小人の男−和久井勉への演出も、本作の大きな見どころだろう。彼の独特の動き方、体の使い方がいい。上野の美術館に忍び込む場面、ホテルの壁の通風口から天知の元へ帰還する場面。終盤の、島原の城(洞窟)の場面まで彼が居続けるのもいい。あと、この洞窟の中のちょっとした水たまりのように見えた部分が、人物の頭まで沈んでしまう装置になっている見せ方も、驚きがあって良いと思った。
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