[コメント] オペレッタ狸御殿(2004/日)
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私的には、鈴木清順監督の魅力は「陰陽の妙」と「奇妙奇天烈な味わい」に尽きると思う。『ツィゴイネルワイゼン』などの、ほの暗い映像から一転して目の覚めるような色彩に変わるシーンの鮮やかさ、一見意味のなさそうなカットバックによる目くるめく映像美は、ストーリーを追うだけが映画の観方ではないことを教えてくれた気がする。
ところが、本作では、このような魅力はあまり発揮されていない。影と陽の対比どころか、最初から最後まで豪華絢爛な衣装に溢れる明朗さがあり(その分チープなところは清順らしいが)、話も単純明快で、「わけのわからなさ=何通りにも解釈可能な不可思議さ」も殆どなかったため、あまり余韻が残らなかった。
そう、清順監督の素晴らしさは、単なる「鮮烈な色彩」ではなく、ほの暗さと対比されるヴィヴィッドな色彩感覚であり、また、単なる「わけのわからなさ」ではなく、そこから生まれる不思議な余韻にあるのだと思う。
今回の作品は、これが清順監督の新たなチャレンジと言われれば、そうなのかもしれないが、これなら他の監督でも撮れそうな気がして、ちょっと拍子抜けだった。それじゃあ、もっと気楽に楽しめばいいじゃないかと言われれば、残念ながらそこまで面白くもなかったというのが正直なところ。
また、主人公のチャン・ツィイーとオダギリジョーは悪くはなかったが、セリフも歌も、そして存在感も特に印象に残らなかった。その分圧巻だったのは、由紀さおりのびるぜん婆々だ。最近はNHK朝ドラの女将役や「赤とんぼ」などの童謡のイメージが強いが、この作品では、不気味だけどユーモラスなキャラを怪演。素晴らしいリズム感でラップを歌ったかと思うと、死に際には「びるぜん婆々のマイウェイ」を熱唱。個人的には、これがフィナーレでも良かったくらいだ。ただ、推定年齢100歳というのは、ちょっとショボい気が…。どうせなら256歳とかにしてもよかったのでは?
そのほか、お萩の局(薬師丸ひろ子)の存在感、そして家老狸(高橋元太郎)や太った腰元狸(すあまというのだそうな)の歌が見事だった。
なお、狸御殿側のチャン・ツィイー、薬師丸ひろ子、高橋元太郎(「水戸黄門」のうっかり八ェ衛役)はどちらかと言うとタヌキ顔、一方、がらさ城側のオダギリジョー、平幹二郎、由紀さおりはキツネ顔と、キャスティングは妙に合っていたと思う。
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