[コメント] 河上の別荘(1930/米)
しかし、トレイシーは、パンクしているとウソをつき、ハイマーを置いて一人で発進する。続いて、かなり時間が経過したのだろう、カンザスシティの場面。教会メンバーの行進を後退移動で撮ったショット。更生したハイマーの演説。そこに、トレイシーが車に乗って来る。挨拶をしに(?)近づいてきたトレイシーを殴って捕まるハイマー。
ハイマーはまた刑務所に入れられるが、過日、トレイシーも護送されて来る。その大物感がすごい。所長への挨拶。囚人たちにも人気者だ。こゝで登場するハンフリー・ボガートは刑務所の事務官かと思った。ネクタイを締めているのだ。模範囚だから、仕事を手伝っているのか。新規に入所する女囚の受付をする。ヒロインのジュディ−クレア・ルースとのやりとり。ボガートが「婚約してる?」「それ質問項目なの?」。本作のボガート、普通に二枚目だ。トレイシーとハイマーの2人が主人公でボガートはチョイ役かと思っていたが、いや、3人が主役と云ってもいいほど、ボガートも目立っている。
他の囚人では、トレイシー、ハイマー、ボガートの3人と同じ監房に、40年刑務所にいるというポップ−ウィリアム・コリアがいる。コリアは野球チームのコーチで、トレイシーはピッチャーなので、彼の腕を気遣い、腕の下に枕を入れることにこだわる。あと、ウォード・ボンドは、トレイシーに殴られる役。野球の試合ではキャッチャーか。
また、この刑務所に出入りしている支援者のご婦人方と、所長の娘とその犬の存在もいい。大きな犬の存在は、矢張りフォードらしい。あるいは、フォードらしい大らかさは、ボガートとルースを二人にするために、ハイマーとトレイシーが所長の娘を呼んでクイズを出す場面や、ボガートが出所する際、所長室で娘に掛け算を教えているルースがおり、所長が二人きりにしてやる演出によく感じられる。それと演芸大会の場面もいい。バズーカと云うガス管でのセントルイスブルースの演奏。ハイマーを立たせての、トレイシーのナイフ投げ。最後の出演者入場で、水着の男たちが沢山出てくる絵面の可笑しさ。
仔細は省くが、トレイシーとハイマーが、ボガートの実家を訪問した場面のボガートの妹の描写もフォードにしか出せない時間の演出だろう。干し草乗り(ヘイライド)という若者たちが干し草を積んだワゴン馬車に乗り、夜の遠乗りをするイベントに参加する。皆で歌を唄うのだが、こゝで双子の女性たちが刑務所の歌を唄う。
そして、刑務所対抗の野球の試合に、なぜかシマウマがいるシュールさ。プレイボール前に、それぞれのコーチが相手のピッチャーをグーで叩くユーモア。トレイシーがピッチャーでハイマーがキャッチャーのツーショットを見ると、矢張り、この2人が主役かと思わせられる。全体に緩いエピソードが繋がれるので、求心力は乏しいけれど、フォードらしい大らかさが溢れた楽しい映画。ボガートの二枚目役も調和している。
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