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[コメント] ポランスキーの 欲望の館(1972/伊=仏=独)

なんて綺麗なフィルム!罫線のあるノートの右側ページにペンで書かれたクレジット。これが既にお洒落!ヒッチハイクでイタリアを旅する娘、シドニー・ロームが、レイプされそうになり、逃げ込んだ館で遭遇する奇妙な人々、出来事が描かれる艶笑譚だ。
ゑぎ

 とりあえず艶笑譚と書いてみたものの、取り立てて笑えるシーンも無いのだが、コメディ基調を志向して作られていることは確かだろう。苦笑する場面はいくつかある。いや、この際そんなことは問題でなく、本作のストロングポイントは、ロームの肢体の魅力と、美しい撮影の画面なのだ。ロームは、館の部屋に入るとすぐにTシャツを脱いで胸を露わにする。翌朝、シャワーから出てくると、そのシャツが盗まれて無くなっており、序盤はずっと胸が(物で隠しても半乳は)見えている。途中で、落ちていたパジャマの上着を羽織るが、夜寝ている際に、今度はパンツ(ずぼん)が脱がされ盗まれる。なので、中盤以降は全裸にパジャマの上だけ、という姿になるのだ。素晴らしい!

 館の住人(逗留者)で、有名どころとしては、マルチェロ・マストロヤンニロモロ・ヴァリロマン・ポランスキーなんかが出てくるが、マストロヤンニには、虎の毛皮を着て四つん這いで登場し、興奮したロームに鞭打たれる、という場面と、逆に、クラシックな(ナポレオン時代のような)警官に扮したマストロヤンニがロームを尋問し、手足に枷をかけた上で鞭打つ、という2つのコスチュームプレイのシーンが与えられている、儲け役だ。ちなみに、ロモロ・ヴァリは関節炎のピアニスト?、ポランスキーは、館の使用人なのか?水中銃をぶっ放す粗野な男の役で、ロームのTシャツを着て現れる。そして、満を持して登場する、館の主人は車椅子のヒュー・グリフィスだ。

 題材に比して、カメラワークはとても気品のあるもので、屋内のドリー移動が心地良い。マストロヤンニが朝いつもいるテラスと、その上の階の、卓球台があるテラスのシーンは、眼下に海や島が見える、ホンモノの屋外シーンだと思うが、本当に美しいカラー撮影だ。

 クライマックスは、ロームがグリフィスの部屋へ呼ばれたシーン。ロームの尻を見るベッドのグリフィス。カット中、白い蛾が飛ぶ。お願いだから脚を見せてくれ。次は胸を。そして、最後にロームはベッドの上に立ち上がり、股間を見せる。ゆっくりとドリーで寄るカメラ。ハレルヤ!こゝの撮影も実にいいのだ。この後の豪雨の中のドタバタ(結局ロームは全裸になる!)と、メタなエンディングも、私には落ち着きがいい収束と感じられる。ポランスキーの緻密さと剛腕を同時に感じる。

(評価:★4)

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